2015 Fiscal Year Research-status Report
中世漢字片仮名交じり文における小字仮名を中心とした書記史的研究
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25770174
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| Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
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Principal Investigator |
村井 宏栄 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (40610770)
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| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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| Keywords | 漢字片仮名交じり文 / 小字仮名 / 日本語書記史 / 重点 / 踊り字 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は中世漢字片仮名交じり文献を対象に、表記種類型とその個別的特徴、わけても小字仮名の実態を中心とした書記様式を実証的に検証することで、12~15世紀の漢字片仮名交じり文書記システムを明らかにしようとするものである。かかる研究目標の下、平成27年度においては、各用例の採取・整理とともに理論化を検討し、以下のような成果発表を行った。
まず、初年度の成果として取り上げた中世仏教者遺文としての親鸞関係資料『西方指南抄』について、重点（踊り字、「ヽ」）使用の観点から整合的な説明を示した（第139回名古屋言語研究会例会）。
平仮名文献の世界においては、13世紀以降、文節頭における重点使用の衰退、及びそれに伴う異体仮名の使い分けの本格化が進む。しかるに、平仮名に比較すると片仮名は多く異体仮名を持たず、連綿を前提としない。散らし書き等、美的要素と言える側面も見られない。かかる性質を持つ片仮名文献においての重点の用法、及び仮名遣い等他の書記言語上の標示との関係性を明らかにした。
結果、本書においては、概して文節頭では重点を用いず、逆に非文節頭では重点を用いる傾向が見出された。重点は文節境界をまたがず、前接要素との連続性を標示することで可読性に寄与している。また、漢字表記を除くと、同音連続の際、いわゆる仮名遣いは、重点使用・同字反復以外の選択肢と言える。本書では、「オ―ヲ」の対立において、文節末に位置する助詞「ヲ」、それ以外の語の語頭は「オ」という明確な分布が観察され、これは重点の様態と同様、言語分節の文字上の標示と位置付けられる。口頭発表での質疑を受け、現在研究論文の投稿準備を進めている。
また、前年度から引き続き『源平盛衰記』の全釈作業を通じて小字仮名の現象についても観察を続行したが（早川厚一他「『源平盛衰記』全釈（一一―巻四―１）」）、直接的な成果としての発表には至らなかった。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
産前産後育児休業により研究代表者の今年度の計画の遂行が2月上旬までとなったため。
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| Strategy for Future Research Activity |
漢字片仮名交じり文を構成する書記方法は、漢字／仮名の使用、朱点、大字仮名／小字仮名、分かち書き、連綿、重点など、多様な分節方法が存しうる。それらの中で文字の大小、分かち書きなどは、その見極めにおいて連続性を持ちうるアナログ的現象と言え、資料によっては客観的な基準化が難しい場合がある。小字仮名は①本行の右寄りに仮名が記される、②他の文字よりも小さく記される、の2点を以て認定することができるが、筆写の文字が小字仮名か否か判断に迷う場合があり、数値化が難しい場合があるということが、本研究課題遂行上明らかとなった。それらを含めて漢字片仮名交じり文の書記現象の中での位置付けとモデル化が必要であると言え、このことは本研究課題初年度の研究成果においても指摘した。
今後は方向性を拡げ、重点使用（及び同字反復）・仮名遣い等、より書記者の書記意識が現れやすい現象をも取り上げつつ、中世漢字片仮名交じり文の書記モデルをさらに考究していく。
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| Causes of Carryover |
本研究課題の応募時、研究代表者は他大学に所属しており、本研究課題が採択された平成25年4月に転属を行っている。所属機関の変更に伴って個別資料の所蔵の有無は大きく変化した。購入を必要とする書籍について変更を来したことが、次年度の使用額が生じた最大の理由である。ただし、蔵書の利用について時間的な制約が大きいことなどから、新たに購入が必要となった書籍の存在も明らかになった。また、応募時に予定していた学会参加についても、所属機関の校務や本研究課題に直接的に関わる研究成果発表が行われる予定がなかった等の事由により、旅費としての支出が無かった。
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| Expenditure Plan for Carryover Budget |
本研究計画遂行にあたっての必要な図書類は平成25・27年度においておおむね購入、または所属機関等において利用することができたので、次年度以降は、繰り越した研究費について、必要な文献資料を購入し、資料・用例収集や研究に関する意見交換及び学会参加のための出張を実施することを計画している。また、消耗品や研究用図書の購入にあたっても、優先順位を見定め、有意義に使用していく予定である。
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Research Products
(1 results)
