2015 Fiscal Year Research-status Report
古代日本語における形容詞と動詞の文法的性質とその変遷
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25770175
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
安本 真弓 山口大学, 人文学部, 講師 (20636287)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 形容詞 / 動詞 / 語彙史 |
Outline of Annual Research Achievements |
古代日本語には、「なほし」と「なほす」のような、現代日本語では見られない形容詞と動詞の対がある。では、なぜこのような対が古代語では現代語よりも多く見られるのであろうか。その理由や、対の有無による相違を検討することで、古代語における形容詞と動詞の文法的性質や、現代語につながる史的変遷を明らかにすることが本研究の目的である。 そこで本研究では、上代から中世までの形容詞と動詞の異なり語数や延べ語数といった全体像を視野に入れながら、まずは、形容詞と動詞を対としてとらえる視点を検討し、語構成上の枠組みを構築したうえで、各語彙を分類する。つぎに、対の有無という形態的な側面と形容詞・動詞それぞれの文法的性質との関係を明らかにしていく。 当該年度は、三年目であり、これまでの年度に引き続き、先行研究の整理と形容詞と動詞の対を網羅的に収集することを行っている。また、上代から中世における文学作品を資料として、形容詞と動詞の異なり語数と延べ語数の収集もしている。形容詞については、先行研究の調査結果があるため、それを適宜参照しながら統一した観点を作成した上で語を収集している。動詞については、先行研究でもそれほどまとまった調査結果が見られないため、索引や古典本文の電子データを利用して語の収集にあたっている。さらに、これらの収集を効率よく行うために、コーパスなどの活用法について模索している最中である。収集した用例には、形態的な対の有無をもとに検討した語構成上の枠組みに従い、分類のための情報付加(タグづけ)を行ったうえで、考察を進めている。 また、古代語における形容詞と動詞の文法的性質を明らかにするためには、用言の意味記述の方法を検討する必要がある。この観点は当初の計画には含めていなかったが、語彙体系として、あるいは個別の語としてどのように記述すべきか、この点についても現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画であれば、形容詞と動詞の対を文献から網羅的に収集する作業や文学作品を資料とする形容詞と動詞の異なり語数と延べ語数の収集、形態的な対を分類するための情報付加(タグづけ)が終了している予定であった。しかし、計画当初には想定していなかった「日本語歴史コーパス」の公開に伴い、これまでの作業とのつきあわせの必要が生じ、そのため予定よりも遅れている状況である。 また、『日本古典対照分類語彙表』が刊行されたことに伴い、当初は計画していなかった、形態と意味との関わりを明らかにすることや、古代語用言の意味記述のあり方についての考察に時間がかかったこともあり、現在までの達成度は遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、これまでの上代から中世の文学作品における形容詞と動詞の異なり語数・延べ語数の調査結果と「日本語歴史コーパス」による調査結果を比較し、語彙収集の調査結果を確定させる。また、その結果を反映させた、形態的な対の有無をもとに検討した語構成上の枠組みを確定させる。その後、分類のための情報付加(タグづけ)を行ったうえで、コンピュータ・ソフト(形態素解析ツール)を利用したデータの分類・整理を行い、考察を進めていく。 さらに、これまでの研究は対がある形容詞と動詞を検討したものである。そこで今後は、上代から中世において形態的な対が見られるものと見られないものとを比較し、対の有無による形容詞・動詞の文法的性質の共通点と相違点について体系的に分析をすすめる。その際、まずは時代ごとの文法的特徴の考察に力点を置き、その後各時代を見比べ、変化がみられるのか否かを明らかにする。このことにより、古代語における対の有無が用言の文法的性質に与える影響やその変遷について検討する。 また、形態的な特徴だけではなく意味との関わりについても検討する必要が生じたため、形態と意味との関わりや、古代語用言の意味記述のあり方についての考察も引き続き行う。
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Causes of Carryover |
今年度は、上代から中世の文学作品における形容詞と動詞の異なり語数・延べ語数の調査が予定よりも遅れたため、コンピュータとそのソフト(形態素解析ツール)類の購入をしなかった。また、その結果、アルバイトを雇って調査補助をしてもらうこともできなかったため、謝金も使用しなかった。以上の予算を来年度に繰り越すことになった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費としては、先行研究を収集するための図書や文献複写代を計画している。また、本年度購入を見合わせたコンピュータとそのソフト(形態素解析ツール)類の購入を予定している。また、調査補助の謝金を支払う必要がある。さらに、研究成果を発表するためなどの旅費を計上している。
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Research Products
(1 results)