2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25770177
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Research Institution | Nara National College of Technology |
Principal Investigator |
刀田 絵美子 奈良工業高等専門学校, その他部局等, 講師 (50632692)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 片仮名交じり文 / 中世語 / 表記 |
Outline of Annual Research Achievements |
現代日本語文の源流は中世前期に定着した漢字片仮名交じり文にあるとされる。中世前期に成立・書写された資料を研究の対象とし、当該資料とその成立に関わった漢文資料との差異を日本語学的に検討することで、漢字片仮名交じり文が表記形態の一種として定着する初期段階でどのような特徴を持つ表記形態であったのかを明らかにすることが本研究の目的である。この目的を達成するために、本年度は大きく二つの資料を取り上げた。 まず、昨年度に引き続き岩崎文庫旧蔵「選択本願念仏集」の訓点の加点状況を調査し、専修寺本「選択本願念仏集延書」に現存する部分の加点状況を確認した。また、それに基づく訓読試案を作成した。ただし、専修寺蔵本との比較が未完了であるため、引き続き検討を続けている。 また、「選択本願念仏集延書」と同じく、漢字片仮名交じり文体で書記された写本が現存する「三宝絵詞」(以下、観智院本と呼ぶ)に見られる書記の特徴を検討した。観智院本では、一語に対して、仮名表記したり一漢字表記であることが多く(調査範囲では九割以上)、複数漢字表記することは稀である(二漢字表記である語:7.4パーセント、三漢字表記である語:1パーセント、四漢字表記である語:0.1パーセント)。これを漢文体で書記された前田尊経閣本「三宝絵詞」(以下前田本)と比較すると、同じ漢字表記を用いる語がある一方で、まったく異なる表記を用いる語が存することが分かった。このような書記が存するということから、従来から言われているとおり、表記内容が語の表記に影響するのと同様に、表記形態も語の表記に影響するといえよう。 本年度に検討したのは、調査結果から得た一部の語であるため、引き続き他の語句についても検討を重ね、漢字片仮名交じり文体で用いられる書記の特徴を明らかにしていく予定である。
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Research Products
(3 results)