2013 Fiscal Year Research-status Report
日本の文脈が関わるL2WTCの発達と変動 -生態学的理解に向けて
Project/Area Number |
25770199
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
菅原 健太 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 助教 (20635833)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
Keywords | 英語教育 / 自発的にコミュニケーションを図る意志 / 英語不安 / モチベーション / 自己(セルフ) / 国際的態度 / 生態学的発達 |
Research Abstract |
初年度は、先行研究を詳細に参照し、日本人の英語で自発的にコミュニケーションを図る意志(WTC)の形成を促す英語使用・学習に関わる自己システムについて更なる調査が必要な面を明確にする目的で研究を実施した。その結果、この自己システムのうちどのような将来像(可能自己)がいかなる心理的過程を経て教室内と教室外におけるWTCにそれぞれ影響をもたらすのかについての調査は進んでいるものの、対象者のこれまでの経験より重要な他者からそうあるべきと認識させられる自己(義務的自己)がWTCにどのような影響をもたらすのか、その調査については十分に行われていないことが明らかになった。さらに、心理学ではこの義務的自己と今そうであると認識する自己(現在の自己)の不一致が不安や動機の低下を誘発することが指摘されているが、この関係について英語使用・学習に特化した概念を用いた詳細な研究は行われていない。そのため、第一段階の研究では、WTCを基準変数とし、それに係る要因として英語不安、英語学習へのモチベーション、現在のコミュニケーション力、将来に達成可能な英語コミュニケーション力、そして、英語使用・学習に関わる自己不一致をとりあげ、要因間の関係を構造方程式モデリングにより検証することを目標とした。なお、文脈を考慮するため、モデルの検証の際には、WTCと英語不安を教室内と教室外の領域で分類し、教室内WTCと教室外WTCを示した2つの構造方程式モデルの比較を計画した。今回の検証に必要な質問紙は先行研究で開発したものを組み合わせて使用した。また、分析に必要なデータ数(利用可能なデータで220名分)も確保できた。次年度は、結果の解釈を進め、WTC発達の生態学的な理解に欠かせない重要な他者(親・教師・クラスメート等)を含む文脈に着目した考察を行い、研究課題の達成に向けて取り組む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究の目的におおむね沿った形で研究が進んでいる。当初計画していた先行研究のレビューを実施し、研究の焦点と課題をみつけ、仮説を立てモデル化し、検証に必要な量的データも収集できた。これまでの研究で次年度に計画している成果報告も実施可能である。しかし、実施計画によると今年度までに、研究課題に沿った質的調査の準備・データ収集も終えていなければならない。これらのことについては、現在行っている調査結果の考察から再度、研究の問いを立て、それに沿ったインタビュー項目等を設定する必要が出てきたので、実施が遅れている。したがって、総合的にみた当該年度の達成度については、やや遅れているという評価になった。
|
Strategy for Future Research Activity |
遅れている質的調査の準備・データ収集を進めるためにも、次年度の計画通り、これまでの研究において量的データの解釈と考察を進め、その段階に至る過程を学会で発表し、最終報告としての論文にまとめる作業を次年度10月までには完了する必要がある。ここまでの計画が予定通り進めば、WTCの発達を促す(あるいは妨げる)自己システムへの理解が深まり、その面への関わりを予測するWTCの変動メカニズムの調査に必要な明確な問いと、それに応じられる適切なインタビュー項目等も立つと考える。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究実施計画上、必要とした書籍(学習者要因・生態学・方法論関連、計6冊)とハードディスク、および、量的調査で必要な統計ソフト(IBM SPSS statistics, Amos)等については量的調査がおおむね計画通り進んでいるため実際に入手・利用できているが、質的調査については計画・実施ともに遅れており、本データの収集・分析で使用を計画した物品(NVivo 10 日本語版等)や人件費・謝金で使用できていないため。 平成25年度に生じた未使用分(100.000円)については、平成25年度に実施できなかった質的調査を次年度以降に実施することで、研究の目的・計画に沿った質的調査で必要な物品(NVivo 10 日本語版等)の購入や人件費・謝金で使用する。
|