2013 Fiscal Year Research-status Report
大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用
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25770208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
金志 佳代子 兵庫県立大学, 経営学部, 准教授 (20438253)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 語彙評価 / 指導ツール開発 / ライティング分析 / C-Test |
Research Abstract |
本研究は、「大学における英語学習者のライティングによる語彙評価ツールの開発と運用」という課題を取り扱うものである。英語学習において語彙は重要な役割を果たすものであるが,学習者が意味や用法を知っている英単語(認識語彙)と,実際に発話や書き言葉として使える英単語(発表語彙)との間には大きな隔たりがあり,認識語彙を発表語彙につなげるための学習方策の体系化が必要とされている。したがって本研究では,学習者の使える語彙力を増進させるための指導ツールの開発に取り組んでいる。 現在,英語学習者のライティングを評価するために,テストや用途に応じて開発されたさまざまな評価ガイドラインが広く使用されている。多くのガイドラインは,いくつかの項目(内容・構成・文法・語彙など)から成り,さらにいくつかのレベル(点数)に分けられている。そのなかで「語彙」項目の評価基準は,使用語彙の多様性や適切性について言及されたものが多く,評価項目のなかでもあまりに一般的で,評価が困難であるとされる項目である。このことを解消するためにも,評価者・学習者にとって使いやすく,英語教育の現場で機能しうる語彙評価ツール開発の検証を行うことにした。 語彙指導ツールの開発・運用のためには、まず学習者による語彙使用の多様性・習熟度を測る必要がある。具体的には,英語学習者の習熟度を測定するためのテスト(C-Test)を実施し,そこから得られた結果をもとに,学習者のライティングを詳細に分析した。これによって英語学習者の習熟度とプロダクトとの関係を明らかにすることができる。現在,学習者の発表語彙力を把握するため,ライティングをサンプルとした語彙の多様性について検証中である。その結果をもとに英語学習者の語彙力を評価するうえで必要となる評価項目を作成し,新たな評価ツールを開発する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的の一つである「日本の大学・短大における英語学習者の習熟度とプロダクトとの関係を明らかにする」について,調査対象となる英語学習者にたいして,習熟度を測るため学期始めと最後に2回のC-Testを実施した。そこから得られたデータをもとにC-Testの信頼性を明らかにするため相関係数,信頼性係数を算出し,t検定を行った結果,C-Test自体の信頼性と学習者によるスコアの伸びが確認された。次に,同じ学習者によるライティングのサンプルをC-Testと同様に学期始めと最後に2度収集した。ライティングの内容は,与えられたトピックについて10分間で書くというTimed Writingの方法をとった。収集したライティング・サンプルについては,学習者の使用語彙の多様性の観点から分析した。この分析結果をもとに語彙使用に関する英語学習者に共通する特徴・問題点を見出し,学習者が使用する語彙を評価するための評価項目(候補)を作成中である。 二つ目の目的である「学習者のデータ結果をもとに,指導者・学習者が使用できる語彙評価のための評価項目を作成し,その信頼性について検証する」点においては,評価項目が確定されたうえで今後確認することになる。 三つ目の目的は,本研究の完成年度である平成26年度以降引き続いて「評価項目を語彙力促進のために教室で活用する方策を探り,自律的かつ自立的な学習者育成のため,語彙指導ツールとして運用する方法について探る」予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度現在,語彙評価項目候補の決定に向けて検証中であるが,評価項目の決定については,今後の信頼性の検証に備えて,時間をかけて慎重かつ適切な判断を下す必要がある。さらに現場の教員を含めた学内外からの専門家の助言を得ながら研究を進める予定である。また,平成25年度から始まった本研究のデータ収集・分析・評価項目の検証・決定までの過程を1つの区切りとして研究発表する。具体的には,語彙評価項目の検証過程についてまとめた論文を執筆し,学会誌に投稿する予定である。 評価項目の信頼性の検証については,次の研究段階として捉え,学習者のライティング・サンプルをもとに教育現場に従事する複数の研究者の協力を得て評価してもらい,評定者間信頼性を算出する。これをもとに複数の評定者の評定が一貫しているか否かを確認することで,語彙評価項目の信頼性を確認することが可能になる。また,評定者には,単なる数字による評価だけでなく,気づいた点などを記載してもらうことで,そのコメントを分析しデータ結果だけでなく経験にもとづく判断も語彙評価項目の改訂・修正作業に役立てることができる。最終的に確定した語彙評価項目は,学習者のライティングを評価するときの評価ガイドラインとして使用される以外に,教室内でライティングをする際の指導ツールとして,学習者にたいして指標を示すことも可能である。これによって学習者が自ら学び,学習者の自律・自立性を育成することにつながるのである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初,平成25年度に予定していた研究成果発表のための旅費(海外学会参加費)を使用していないことによるものである。 平成26年度にデータ(コメント)分析として使用するNvivoなどの統計ソフトを購入する予定である。
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