2014 Fiscal Year Research-status Report
戦後日本における医療運動の展開と地域社会形成に関する実証的研究
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25770238
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Research Institution | Saga University |
Principal Investigator |
鬼嶋 淳 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (60409612)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 日本近現代史 / 地域史 / 医療運動史 / 生活学校 / 環境資源問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.基本史料と位置づけている「大井医院・大島慶一郎関係資料」の調査・整理作業を進めた。本年度は新たに、1960年代後半から80年代のミニコミ誌がまとまって見つかった。埼玉県入間東部地域のものであるが、現在、別機関で保存されていないこともあり、丁寧に整理作業を進めた。従来から調査対象地としている埼玉県入間郡大井村において、大井医院や院長の大島慶一郎は、とくに高度経済成長期以降、1950年代までの医療運動を基盤にしつつも、人々が地域で生活する際に問題となる様々な新たな課題の解決に取り組んでいる。 本研究課題は、医療運動を中心に地域社会の形成過程を歴史的に検討していくことであるが、地域社会形成について医療運動に限定せず、生活全般まで含めて検討する重要性が明らかになってきた。本年度発掘できた地域のミニコミ誌は、そうした運動の広がりを考えるうえで重要な史料であり整理作業に意義がある。今後、一般公開にむけて目録Ⅱ作成を進める予定である。 2.上記のような問題設定の広がりを踏まえて、医療運動に限定せず環境資源問題に取り組みながら、新しい地域社会形成を進めた地域女性の運動について分析した。具体的には、1960年代後半から70年代における大分県の生活学校運動の分析を行った。生活学校が、オイルショック以前から資源問題に着目し地域で運動を展開できたのは、担い手の主婦たちが「生活実感」から運動に取り組んだこと、「生活学校方式」と呼ばれた運動方法が地域女性の主体性を喚起したことが大きな要因といえた。生活学校運動に参加した主婦たちは、高度成長による社会変動により生じたゴミ処理や過大包装といった新しい地域課題を具体的に解決していき、新しい地域のあり方を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1.基本史料である「大井医院・大島慶一郎関係資料」の整理を終え、目録Ⅱを刊行する予定であったが、今年度新たに重要史料が発見されたため、整理作業に予定以上に時間がかかった。目録を刊行できなかったため、史料分析を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
1.基本史料である「大井医院・大島慶一郎関係資料」の目録Ⅱを刊行し、資料整理を終え、分析に集中する。周辺史料の探索、関係者への聞き取り調査を継続する。
2.問題設定の広がりを踏まえ、医療運動に限定せず、地域における諸運動に注目して、地域社会形成の過程を歴史的に検証する。
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Causes of Carryover |
2月、3月の出張予定、および人件費・謝金の計画が、調査先の資料館側と都合があわず変更となったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
本年度実施できなかった史料調査を、調査先の資料館と相談し次年度前半に行う。当初の計画より、史料の分量が増加したため、次年度は人件費・謝金も増えることが予想される。次年度予算と合算して使用し、研究の推進の遅れを取り戻す。
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