2016 Fiscal Year Annual Research Report
Process of bronze coin integration at the beginning of early-modern Japan, focusing on the Bunroku-Genna era (1592-1624)
Project/Area Number |
25770248
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
高木 久史 安田女子大学, 文学部, 准教授 (50510252)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 銭 / 貨幣史 / 経済史 / ビタ / 織田信長 / 近世史 |
Outline of Annual Research Achievements |
銭については、政策を直接の契機としない、社会の実態レベル・政策外のレベルにおける統合の方向性を示す史料を複数検出した。また政策レベルについては、成立当初の江戸幕府が基準銭に採用したビタが、すでに信長政権の段階で基準銭に採用されており、秀吉政権もその政策を継承していたことを示した。従来の研究では近世的銭統合政策は家康政権以降のものを軸に語られてきたが、本書ではそれより先行して一六世紀段階で存在していたことを示したことで、従来の歴史像を変えた。また、一六世紀後半から一七世紀初頭にかけて、社会の実態レベルでのビタの基準銭化、政策レベルでのビタによる統合の方向性があった一方で、社会の実態レベルでビタ内部の階層化が起こっており、それが寛永通宝発行直前まで継続していたことを示した。 また派生的な成果として金・銀・紙幣についても、近世初頭の貨幣統合という本研究の趣旨に関する点において新たな知見を得た。金・銀についてはその普及(従来の観測結果よりも早期に普及していた実態)、西日本における狭義の銀遣い(価値尺度としての銀使用)の成立、社会の実態レベルでの統合の方向性を示す史実等を検出した。紙幣については中世手形類と近世紙幣とくに初期私札との連続的要素、具体的には譲渡性、預状形式、中世の紙券選好の経験との連続性等と、その日本中世的な歴史性すなわちヨーロッパ初期紙幣と必ずしも共通しない要素を検出した。日本の手形類が中世段階で譲渡性を持っていた点は、近世に至り譲渡性を獲得したヨーロッパの手形類と対照的である。中世手形類の譲渡性は近世手形類でなく、むしろ初期私札に継承されることになる点で、初期私札の文書的系譜は中世手形類に求められる。また初期私札の額面が慶長銀建てであることは、江戸幕府による貨幣統合の受容の一端と評価することができる。
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Research Products
(7 results)