2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770251
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Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
荒木 和憲 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部文化財課, 主任研究員 (50516276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中世 / 対馬 / 宗氏領国 / 朝鮮王朝 / 綿布 / 貨幣 / 環玄界灘地域 / 応永の外寇 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本・朝鮮両国の国境地域である対馬に着目し、中世~近世初期の宗氏領国の特質を明らかにし、両国家間におけるその主体性と従属性のあり方を明らかにしようとするものである。本年度は、第一の課題である「中世対馬宗氏領国に関する基礎的研究」のうち、テーマ②「環玄界灘地域の戦争と平和」に関する研究を、前年度に引き続いて重点的に行った。その目的は、宗氏領国の枠組を超えて展開する流通・貿易を保護する立場にある宗氏が、環玄界灘地域全体の平和と経済・社会の安定にどのように関与していたのかを明らかにすることにある。 史料調査としては、長崎県立対馬歴史民俗資料館における中世~近世初期の宗家判物写等の調査(計7日間)、神宮文庫における伊勢参宮帳写本の調査(計2日間)を行った。 研究成果としては、昨年度に成稿した論文1本が刊行され(「応永の外寇」高橋典幸編『戦争と平和』竹林舎、平成26年10月、昨年度の研究成果として報告済)、新規に論文1本を成稿・公刊した。論文「中世対馬における朝鮮綿布の流通と利用」(佐伯弘次編『中世の対馬』勉誠出版、平成26年12月)は、室町・戦国期の西日本地域における銭貨の信用低下状況を受け、対馬島内では綿布をはじめとする朝鮮産布帛が銭貨に代位する貨幣として利用されたこと、対馬島外との遠隔地取引においても朝鮮布帛が貨幣として利用されたことなどを明らかにするとともに、対馬宗氏が貨幣化した朝鮮木綿の品質維持のための法令を発するなどして経済・社会の安定を図っていたことを指摘したものである。 なお、第二の課題である「近世初期対馬宗氏領国に関する基礎的研究」については、史料の収集・データベース化などの基礎作業に着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究目的にもとづき、関係史料の調査・収集・整理・分析を進捗させるとともに、研究成果として、新規に論文1本を成稿・公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
第一の課題である「中世対馬宗氏領国に関する基礎的研究」については、基礎的作業が完了しているので、引き続き研究成果の公表に努める。 第二の課題である「近世初期対馬宗氏領国に関する基礎的研究」については、「宗家文書」「資勝卿記」「鹿苑日録」などの日本側史料および朝鮮側史料の調査・収集・データベース化などの基礎的作業を、来年度上半期を目途に完了させ、下半期は研究成果のまとめ作業を行う。
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Causes of Carryover |
本務において、平成26年4月~6月開催の特別展の主担当を務めたことに加え、平成27年4月~5月開催の特別展の主担当を急遽務めることとなり、展覧会業務が輻輳したため、史料調査のための出張回数・日数が大幅に制約された。旅費執行額が当初予定額より下回る状況となったため、関連図書の購入・充実を図り、物品費の執行を進めたが、若干の残額が生じてしまった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
残額発生の経緯に鑑み、旅費としての使用を図る。
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