2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25770251
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Research Institution | National Museum of Japanese History |
Principal Investigator |
荒木 和憲 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 准教授 (50516276)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 中世 / 近世 / 対馬 / 宗氏領国 / 室町幕府 / 朝鮮王朝 / 九州 / 海域交流 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度の調査成果としては、①長崎県立対馬歴史民俗資料館所蔵の「宗家文書」の調査、②対馬市教育委員会所蔵の「藤家文書」の調査、③対馬の沿海集落の現地踏査、④佐賀県唐津市内の現地踏査、が挙げられる。①では、中世対馬に関わる基本史料である「宗家御判物写」の原本調査・撮影を昨年度に引き続き実施した。②では、今年度公開されたばかりの新出史料である「藤家文書」の調査・撮影を行った。とりわけ②は中世文書の原本にもとづく調査であり、多くの有益な情報を得ることができた。③では、中世対馬の交通・経済を考察する上で重要となる対馬中部・南部地域の沿海集落を重点的に踏査し、中世の海上交通に関わる自然地理的情報を得ることができた。④では、対馬との政治・経済上の関係が濃厚な上松浦地域(唐津市)の波多氏関連史跡を踏査した。 今年度の研究成果としては、①学会発表「室町・戦国期の対馬と壱岐-海域秩序をめぐる政治史」(九州史学会大会日本史部会)、②単著『対馬宗氏の中世史(仮)』(400字×300枚、書き下ろし、吉川弘文館より刊行予定)の成稿、が挙げられる。①は、朝鮮-対馬-博多を結ぶ海上交通ルート上における壱岐・上松浦地域の地政学的重要性を確認し、対馬宗氏と壱岐・上松浦の地域権力(波多氏・日高氏)との政治的関係の変動が海域秩序のあり方を大きく規定したことを明らかにしたもので、単に北部九州地域史上あるいは日朝交流史上に意義をもつのみならず、ひろく海上交通史・海域史研究に資するものである。②は、本研究の3年間の研究成果の集大成であり、対馬における史料調査・現地踏査の成果も盛り込んだ。とかく日朝交流史の文脈で語られがちな宗氏領国について、その内在的要素(宗氏の家督継承や対馬の地域史)と外在的要素(室町幕府・北部九州・朝鮮王朝との関係史)を通時的かつ相互連関的に叙述したもので、中世対馬に関する通史的性格を有する。
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