2013 Fiscal Year Research-status Report
近代中国における地方官僚およびその機構に関する研究
Project/Area Number |
25770252
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水盛 涼一 東北大学, 文学研究科, 助教 (20645816)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 地域社会 / 官僚制度 / 近代化 / セミラティス構造 |
Research Abstract |
本研究は近代中国における地方官僚の実態およびその機構の解明を試みるものである。その過程として、第一に地方官僚名簿『同官録』の収集整理、および民営新聞『申報』等資料との対照を、また第二に上記の成果を地方官僚データベースとして作成、彼らの勤務形態や縁故形成を解明することを目的とした。 初年度となるこの平成二十五年度には、データベース作成のために日中の図書館を訪問、資料調査を行った。おもには東京や京都の各図書館、そして八月には中国上海市の上海図書館、また同じく江蘇省の南京図書館を訪問し、現在の河北省の勤務者に関する『畿輔同官録』(上海図書館蔵、線普401801-06)をはじめとする多くの資料を調査・複写することができた。当然ながらその過程で地方官僚データベースの増強を行っている。 またその調査と平行し、その初動的成果を「研究発表」の項目で記載したような五回の口頭発表として公表することができた。その内訳は、『同官録』そのものに関する十月の広島および十二月の香港での発表、そして『同官録』分析の成果として地方官僚の動向をおった五月の岩手および八月、十月の宮城での発表となる。その後者のうち五月のものは地方官僚への査定、八月のものは彼らの能力向上のための教育機関、十月のものは北京の朝廷における彼らの行動を確認したものであった。 なお、そのうち十月発表、および十二月発表については、「研究発表」の項目のそれぞれ「召見の風景──清朝後期における謁見儀礼の基礎的研究」「中國題名録文化──官僚名冊的形成與發展」として活字化を行うこともできた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
データベース作成は思いの外に進展し、幾度かの発表を行うことができるほどに材料を集めることができた。この発表数、またその内容からすれば「当初の計画以上に進展している」といえる。 しかし世界各地の図書館での資料収集やデータベースの展開については、鋭意作成を進めているとはいえ、対象となる資料の膨大な内容からすれば、未だ端緒についたばかりに過ぎない。すでに形成し得ている中国での人脈を生かして今後さらに資料収集に努力すること、またその間にさらにデータベースを充実させることが求められよう。 そこで「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
二十五年度は東京や京都、また中国の上海や南京の各図書館を訪問することができた。うち上海では上海図書館の呉建偉研究員や復旦大学の陳正宏教授、また南京では太平天国歴史博物館の張鉄宝研究員、南京大学の陳蘊茜副教授の助力を得ることができ、資料収集を円滑に進めることができた。 しかしなお北京市の国家図書館や社会科学院図書館、重慶市の重慶図書館、山東省済南市の山東省図書館、広東省広州市の中山図書館などを訪問し、地方官僚データベースをさらに拡充するとともに、その成果を公開していかねばならないだろう。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初購買を予定していた日商エレクトロニクス株式会社のマイクロフィルムエクスプローラー(当時推定価格五十万円)は為替レートの変動もあり七十万円を突破、当年度所要額七十万円を勘案し購買を断念した。そのため執行計画を大幅に変更せざるを得ず、かわってかねてより調査を検討しており東北大学に未所蔵の『政治官報』全四十八冊(文海出版社、一九六五年十二月)、『戸部奏稿』全十冊(全国図書館文献縮微複製中心、二〇〇四年七月)、『清代軍機処電報档彙編』全四十冊(中国人民大学出版社、二〇〇五年九月)などの書籍を購入、地方官僚データベースの作成に資した。 来年度は当年度にくらべ所要額が減少するのだが、下記「使用計画」に記載したような国際学会への参加要請があり、旅費が増大する可能性が高い。そのため全体からすれば小額ながら当年度執行を一部保留したのである。 上記「理由」に述べたように、すでに中国社会科学院の張海栄研究員より「第六届晩清史研究国際学術研討会」へ、また河南大学歴史文化学院の牛建強教授より「黄河文化与中国道路国際学術研討会」へ参加するべく要請があり、旅費が増大する可能性が高い。平成二十六年度予算として存留した四万円は旅費の一部として充当する予定である。
|