2015 Fiscal Year Annual Research Report
近代中国における地方官僚およびその機構に関する研究
Project/Area Number |
25770252
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水盛 涼一 東北大学, 文学研究科, 助教 (20645816)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 近代化 / 官僚制度 / 地方行財政 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は中国の近代を官僚社会の変化から観察することにあった。というのも、清朝後期(1850年~1912年)より増加の一途をたどった官僚たちは、国初以来の職務はもとより、数多の新規事業を担うこととなった。中央官僚は日々に拡大する隣接業務のほか外交など新たな分野の運営に携わり、地方官僚もまた近代化事業や商業振興、各種税金の徴収といった新事業を通して濃密にまた多方面に地域社会へと分け入った。そして彼らは中国国内の近代化を遂行、辛亥革命にも柔軟に対応し勤務を続けた。言わば、彼らこそが中国の近代の結節点であった。 先行研究のほとんど存在しない彼らにつき、本研究では各種資料を分析・整理してータベースを作成、研究基盤の作成を行った。その資料とは、主に国外に収蔵される当時の省庁・地方別官僚名簿『同官録』であり、また各種民営新聞の記載となる。この民営新聞には人事や法令について北京の公報『京報』を転載するほか、ほぼ毎日にわたり「撫轅事宜」として地方各省の大官の動静を伝えている。これら一本としては零細な記事を収集し、いわば自力で『同官録』を生成、『同官録』による官僚データベースの内容との対照を行ったのである。 そして、こうした作業にもとづいて国内外で成果の発表を行った。その成果は「清朝末期の候補官僚と人事評価」といったものから、中国地方官僚の教育に携わった吉野作造の中国での事績を追った「天津の吉野作造とその時代──清朝における法政学堂を中心として」にまで及ぶ。しかしなお官僚研究は端緒についたばかりであり、今後のさらなる深化が望まれる。
|