2016 Fiscal Year Annual Research Report
Study on the Pastoral Nomads' Central Plain of Northern and Southern Mongolia : From the viewpoints of Turkic Inscriptions and Archaeological Sites.
Project/Area Number |
25770257
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Research Institution | Aoyama Gakuin Women's Junior College |
Principal Investigator |
鈴木 宏節 青山学院女子短期大学, 現代教養学科, 助教 (10609374)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | モンゴル / 遊牧民 / 突厥 / トルコ / ゴビ / 中央ユーラシア / 唐 / 中国 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成28年度も海外調査を実施し、これまで3年間の研究成果とあわせ、本研究の総括をはかった。 まず、8月中旬に中華人民共和国に渡航し、モンゴル高原・ゴビ砂漠の南端に位置する内蒙古自治区から寧夏回族自治区の景観調査を行った。いわゆる「南モンゴル」において歴史的に遊牧民の中心拠点であった陰山山脈地帯から、農業牧畜接壌地帯とみなされるオルドス地帯の生態環境と関連遺跡を調査した。具体的には、唐代の軍鎮跡ならびに宋代の軍事施設跡を踏査することで、遊牧民が当該地域を戦略的に移動するルートとその特徴を把握することができた。 つぎに、8月下旬にモンゴル国に渡航し、ゴビ調査を実施した。これまでの調査報告では情報が皆無あるいは僅少であった地域の調査であり、現地入りしなければ見落としてしまうような岩画資料や文字銘文などを確認することができた。今後の調査をうながす再発見は大きく2つある。第1は南ゴビ県のサイリン=バルガスという土城遺址であり、GPSをもちいて地理学上の位置を確定させるとともに、計測を実施した。その結果、本遺跡は数百メートル規模の方形の二重城郭を備えた版築様式の土城遺址であり、城郭の周囲には都市遺構が存在した可能性もみいだした。第2に中ゴビ県では、デルゲルハンガイ郡において漢文銘文を実見した。本銘文は崖の絶壁に地上3メートル程の位置に刻まれたものであり、テキストの判読には困難が伴った。従って、カウンターパートであるモンゴル国国立科学アカデミー考古学研究所の所員とともに現状把握につとめた。 以上のように、遊牧民の移動経路に関連するモンゴル南北の遺跡を周回し、あわせて文献による裏付けを実施してきた。その結果、ゴビの歴史環境は南北モンゴルを行き来した遊牧民が築きあげてきたものであり、今後も十分な現地調査と文献精査によって研究を進展させるべき対象であることが判明したのである。
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