2015 Fiscal Year Annual Research Report
中華王朝における婚姻に基づいた外交について―遼・金・西夏・元を中心に―
Project/Area Number |
25770258
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Research Institution | Suzuka National College of Technology |
Principal Investigator |
藤野 月子 鈴鹿工業高等専門学校, その他部局等, 助教 (30581540)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 遼 / 西夏 / 高麗 / 阻卜 / カラハン朝 / 西ウイグル / 青唐 / 婚姻 |
Outline of Annual Research Achievements |
遼代における婚姻に基づいた外交政策の実態を解明するという観点に基づき、西夏に対して行われた公主降嫁の事例を考察した。遼がこの主導権を握り、宗主国としての立場から西夏の求婚を許可する形式で公主降嫁を行っているということをはじめとし、そこでは、唐代における和蕃公主の降嫁の様相と相似する数多くの共通項を確認し得る。同時に、遼は西夏への公主降嫁を巧妙に駆使し、北宋に対しては常に強固な態度で臨むことが可能であった。この点と、前稿で検討した、北宋との婚姻事例に見られる遼の狙いをも合わせ考えると、やはり、婚姻に基づいた外交政策は当時の東部ユーラシアにおける国際関係を遼の統率の下で効果的に機能・持続させるための重要な手段であったということが顕著に示されているといえる。 遼は西夏以外の近隣諸国に対しても公主降嫁を行っている。ここには、かつての世界帝国として君臨していた唐の外交政策を継承すると同時に、遼独自の方針をも存在していたということが垣間見える。北宋ではもはや近隣諸国に対して公主降嫁を行うことを否定的に捉えて回避する傾向にあったため、そのことを充分に理解していた遼は北宋と盟約を締結するにあたって自身が優位に立てるよう、外交政策としての婚姻を巧妙に駆使する反面、近隣諸国に対して公主降嫁を行うことを全く否定的に捉えることなく、当時の東部ユーラシアにおける国際関係を遼の統率の下で効果的に機能・持続させるための重要な一手段として婚姻に基づいた外交政策を実施したのである。こうした遼代における特徴と五胡十六国北朝隋唐のいわゆる北方諸族及びその影響を強く受けて建国された王朝における特徴には数多くの共通項が確認出来る。とすれば、婚姻に基づいた外交政策は、非漢民族いわゆる北方諸族によって建国された王朝において盛んに行使された「北方的」な性格を有するものであったと結論付けられる。
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Research Products
(3 results)