2015 Fiscal Year Research-status Report
遊牧と定住の共存:モンゴル支配期西アジアの財産保有と人間関係に着目して
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25770260
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
高木 小苗 早稲田大学, 文学学術院, その他 (70633361)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | イラン / モンゴル / イクター / 投下領 / 『集史』 / 歴史 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成27年度は、後述のとおり、研究課題に関連する資料の収集・分析を進め、論文執筆と学会報告を行った。 (1)資料収集:ペルシア語・漢語・モンゴル語・トルコ語・欧米諸語の刊行史料・研究文献を収集し、分析した。 (2)論文執筆:叙述史料にもとづき、イルハン国初期の君主が、親族・家臣に支配地と牧地を指定して駐屯させるとともに、そのような支配地・牧地の範囲内あるいは別の地方の一定地域を彼らに割当て、そこからの各年の税収を付与したことを明らかにした。また、親族の支配地や税の獲得権は、彼らの死後は原則的に子孫に分与される傾向が顕著に見られることも確認した。一定地域の税収を親族・家臣に付与する制度は、イルハン国の7代君主ガザンが14世紀初頭に軍隊に下賜したイクターおよび元朝の投下領に通じるが、この点については、今後、さらに検討する必要がある。 (3)学会報告:本研究課題の主要史料の一つである『集史』「モンゴル史」は、イルハン国の7代君主ガザンの命令により編纂された史書であるため、イルハン国の成立を正当化し、歴代君主の中でもガザンと彼の父祖について肯定的に叙述されたと推測されている。『集史』「モンゴル史」のこのような記述傾向(バイアス)の明確化と具体例の呈示は、本研究課題の遂行のために重要な作業である。そこで、『集史』「モンゴル史」とその典拠史料の一つ(あるいは同一の情報源にもとづく)と考えられる記録『モンゴルの諸情報』の記述を対照し、前者のバイアスを明確化するとともに、イルハン国初期の通史を再考した。その際、同時代の外交書簡や貨幣銘、ペルシア語・アラビア語・アルメニア語の地方史書や『集史』以降の史書なども参照した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
体調不良により海外渡航が困難であったため、当初、計画していたイラン現地調査を平成28年度に延期することとし、代わりに現地で収集する予定であった刊行史料・文献を郵送により購入し、国際学会で予定していた報告を国内の学会で発表した。また、平成28年度に予定していた諸言語の刊行史料・文献の収集を今年度中に行った。
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Strategy for Future Research Activity |
平成28年度中に、延期した現地調査を行い、その成果を整理する。平成27年度の学会報告を雑誌論文として投稿し、4年間の研究成果を推敲し、学位論文としてまとめる。
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Causes of Carryover |
当初、計画していたイラン現地調査を平成28年度に延期した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成28年度に調査用具を購入し、夏から年度末にかけて調査現地を行う。
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Research Products
(2 results)