2013 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮開港後における華商の貿易決済―東アジア地域史の視点から
Project/Area Number |
25770261
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
石川 亮太 立命館大学, 経営学部, 准教授 (00363416)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 華商 / 金本位制 / 日清戦争 / 同順泰 / 朝鮮米 / 中国海関統計 |
Research Abstract |
朝鮮開港期における華商の貿易決済のあり方について検討するという「研究の目的」を前提に、本年度の研究実施計画では、「華商経営資料の分析」「マクロ的な統計整理」を特に重点的な作業目標として掲げ、これに即して研究を実施した。 まず「華商経営資料の分析」ついては、既に入手している同順泰経営文書のうち、日清戦争以後にかかる部分を重点的に分析し、その貿易決済に関する叙述・数値を収集した。 その結果、日清戦争後の同順泰は、日清戦争以前と同様に主に上海からの輸入貿易に従事していたものの、その決済(送金)の方法については、日清戦争以前と相当に大きな相違が見られるようになったことが明らかとなった。つまり、1.日清戦争以前に主たる決済方法であった朝鮮産砂金の現送が、金本位制移行に伴う日本の朝鮮産金吸収政策の影響を受けて、事実上不可能となった。2.そのため日系銀行を通じた日本経由送金がより重要な決済方法となったが、日系銀行への払い込みには日系紙幣を入手する必要があった。日系紙幣は主に日本への朝鮮米輸出に伴って市場に放出されたため、華商の決済行動(ひいては貿易自体)も日朝貿易の景況によって強く影響を受けるようになった。 このことから、日清戦争後の朝鮮華商が、依然として対上海貿易を事業活動の中心に据えながらも、決済を通じて、日本の対朝鮮関係から深い影響を受けるようになったことが明らかになった。この知見は、朝鮮華商の広域商業活動が、日本経済圏の膨張からいかなる影響を受けたかを明らかにする上で重要なヒントを提供している。なおこのような成果の一部は、2013年6月にマカオで実施された国際亜州学者会議などで発表した。 一方で「マクロ的な統計整理」については中国海関統計の検討に着手しているが、まだ完了していないため、2014年度も引き続き作業に取り組む。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究実施計画に記した2つの目標のうち、「華商経営資料の分析」については順調に実施し、今後の作業の足掛かりとなる一定の成果を挙げることができた(学会での口頭報告を行った)。一方で「マクロ的な統計整理」については、作業に着手したものの、まだ十分な成果を挙げるには至っていない。そこで本研究は、「計画以上に順調」とまでは言えないものの、「おおむね順調」と判断してよいと考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
当該時期の朝鮮貿易・金融に関する統計は、十分に整理された状態とは言えない。本年度は中国海関統計の整理に着手したが、引き続きこの作業を推進する必要がある。 華商の経営資料についても整理を続ける必要があるが、本年度の作業である程度の足掛かりを得ることに成功したため、今後はそれを市場のマクロ的な動向や、各当事国の政策等に位置付けることが必要であろう。各国文書館の外交文書等をつきあわせ、その中に華商経営資料から得られた知見を位置づける作業を推進したい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究実施計画では海外調査を2回実施する予定であったが、春季の調査を実施できなかったため。 データ整理に用いるパーソナルコンピュータ等の購入費用の一部に充当する予定である。
|