2013 Fiscal Year Research-status Report
近代ロシアにおける正教系定期刊行物と世論形成との関係についての研究
Project/Area Number |
25770262
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
巽 由樹子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (90643255)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア史 / 正教 / 出版 |
Research Abstract |
第一年目にあたる2013年度は、本研究課題に関する基礎的な資料の収集を行った。その際、まず国内での史料所蔵状況を把握して必要資料を入手してから、滞在時間が限られる国外での資料収集を行い、調査作業の効率化に努めた。具体的には、2013年9月までの勤務先である東北大学東北アジア研究センターと、招聘研究員として所属する早稲田大学の所蔵資料から研究文献を入手した。また、2013年6月と9月の二度にわたって、北海道大学スラヴ研究センターで、研究文献と、マイクロフィルムとして所蔵されている代表的な正教系定期刊行物とを閲覧、複写した。つづいて、2014年3月にサンクトペテルブルクに渡航し、ロシア国立図書館で代表的な正教ジャーナリストの一人アレクサンドル・ポポヴィツキーについての史料と、彼が刊行した宗教雑誌『ロシアの巡礼者』のマイクロフィルムを閲覧、複写した。 本研究課題の申請にあたっては、「(1)聖職者身分出身の俗人文筆家たちの世論形成における役割」「(2)『主教管区報』のメディア分析」「(3)出版分野における国家と正教会との関係」の三点を解明すべき課題として挙げた。初年度に集めた資料を読み進めるうちに、このうち特に課題(1)が、身分制、都市化、科学への信頼など、近代化するロシア社会の多様な問題と正教信仰とを結びつける有望な論点であることが認識された。また、その分析を進めることが課題(3)の考察にもつながると予想された。それゆえ、次年度以降、課題(1)に多くの時間を配分することとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年は基礎的な資料収集を行うことを目標として設定していたが、国内外で作業を実施できたことにより、おおむねこの目標を達成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は構想段階において、全国の『主教管区報』を収集し、書誌の総覧の作成という形で成果公開することを予定した。だが、この一年の研究によって、聖職者身分出身の俗人ジャーナリストの活動に焦点を当てることが、多様な側面から近代ロシア史研究の進展に貢献しうるとの判断に至った。したがって、次年度以降はこの課題に特に時間を配分する。ただし、正教形出版物のビブリオグラフィーの作成も、並行した作業として遂行することを心がける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国外出張を年度末に行ったため、為替レートの変動などから予想外に発生した残額を他の費目に用いる日程的な猶予がなかった。 次年度は今年度より配分額がやや少ないため、国外旅費に充当する。
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