2014 Fiscal Year Research-status Report
近代ロシアにおける正教系定期刊行物と世論形成との関係についての研究
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25770262
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
巽 由樹子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (90643255)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | ロシア / 宗教 / 科学 / 近代 / 出版 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、本研究課題に関連して、5月に日本科学史学会でのパネル「19世紀ヨーロッパのポピュラー・サイエンス」に参加した。これは、19世紀のイギリスおよびドイツの科学知に関する諸報告(「時報技術の信頼性と公衆――19世紀のグリニッジ天文台を事例に」「ロンドン動物園と科学知の演劇性――1836年のキリン・センセーション」「19世紀後半フランクフルトにおける貝類学者とアソシエーショナルな科学」)と並んでの口頭発表であり、「19世紀後半ロシアの出版メディアとポピュラー・サイエンス――帝政末期の通史を再考するための事例として」と題し、近代ロシアの都市大衆のあいだで科学知が信仰心と混交して広まっていたことを指摘した。こうした場で報告したことにより、科学史研究の専門家から、ロシア地域以外におけるポピュラー・サイエンスと宗教との関係に関する様々な視角、情報の教示を受けた。その上で修正も加えながら、この報告の内容を、1月に刊行された『科学史研究』に公表することができた。 以上を中心的な業績としながら、平成26年度は他に、論文「19世紀後半サンクト・ペテルブルグにおけるポーランド人の出版活動―地理書『絵のように美しいロシア』の刊行をめぐって」および共訳書『〈遊ぶ〉ロシア:帝政末期の余暇と商業文化』(ルイーズ・マクレイノルズ著)を刊行した。前者は19世紀後半ロシア帝国における出版業者の宗派性について、後者は同時期のロシアにおける大衆文化の実相についての研究である。これらに取り組んだことで、本研究課題の背景要因について考察を深めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
この時点までに収集した史資料にもとづき、口頭およびペーパーによって中間段階の成果を公表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究実績報告書で述べたように、平成26年度は本研究課題が最初に掲げた三つのトピックのうち、「聖職者身分出身の俗人文筆家たちの世論形成における役割」に重点的に取り組んだ。平成27年度もひきつづきこのトピックに焦点をあて、正教と近代化するロシアの国家、社会との関係について考察を深める。
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Causes of Carryover |
2014年10月に「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」に採択され、2015年1月末よりハンガリーの中央ヨーロッパ大学に派遣されたため、年度末に予定していたロシア、フィンランドでの調査を行うことができなかった。そのため、国外旅費に充てる予定だった経費が残り、次年度使用額が発生した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
「頭脳循環プログラム」による派遣が、平成27年度の前半も継続するため、年度後半に計画的に図書とマイクロ史料を購入することによって経費を執行する。
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