2015 Fiscal Year Research-status Report
近代ロシアにおける正教系定期刊行物と世論形成との関係についての研究
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25770262
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
巽 由樹子 東京外国語大学, 大学院総合国際学研究院, 講師 (90643255)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | ロシア / 近代 / 出版メディア / 科学史 / 宗教 / 正教会 |
Outline of Annual Research Achievements |
第三年目にあたる2015年度は、中央ヨーロッパ大学(ハンガリー)における在外研修と重なったため、英語圏の研究者との交流に力を入れた。特に6月29日-7月4日にかけて、欧州各地の研究者が集まるサマーユニバーシティ"Cities and Science: Urban History and the History of Science in the Study of Early Modern and Modern Europe"に参加し、"Popular Science and Late Imperial Russian History"と題した報告をおこなう機会を得たのは有益だった。また、派遣先大学は欧州における科学史研究の拠点のひとつだったため、所属研究者との意見交換や資料情報の供与により、視野を広げることができた。この他に、7月にはサンクトペテルブルクに渡航し、ロシア国立図書館と市内の古書店で、正教ジャーナリズムに関係する一次史料を数多く入手した。すでに昨年度までの報告書にも記載した通り、本研究課題の申請にあたっては、「(1)聖職者身分出身の俗人文筆家たちの世論形成における役割」「(2)『主教管区報』のメディア分析」「(3)出版分野における国家と正教会との関係」の三点を解明すべき課題として挙げたが、このうち特に課題(1)が、身分制、都市化、科学への信頼など、近代化するロシア社会の多様な問題と正教信仰とを結びつける有望な論点であることが認識されたため、これに時間を重点的に配分することとした。本年度の研究報告と史資料収集は、こうした方針にもとづいた活動である。その上で、聖職者ジャーナリズムを取り巻く環境だったところの「(3)出版分野における国家と正教会との関係」について、詳しく調査する段階に達したと考えているため、次年度はこれに力を入れて取り組むこととしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2015年度は「(1)聖職者身分出身の俗人文筆家たちの世論形成における役割」の国外での研究成果報告と、欧州の科学史研究者との情報交換とによって、研究の射程を広げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
【研究実績の概要】にも記したように、2015年度は「(1)聖職者身分出身の俗人文筆家たちの世論形成における役割」の国外での研究成果報告ができたため、次のステップとして、そうした聖職者ジャーナリズムを取り巻いた環境であるところの「(3)出版分野における国家と正教会との関係」について詳しく調査したい。これは、先行研究を読み込む作業が中心になると考えられる。そのうえで論文を執筆し、成果公表につなげたい。
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Causes of Carryover |
2015年度は「頭脳循環を加速する戦略的国際研究ネットワーク推進プログラム」の派遣対象者となったため、派遣期間中、特に多額となる旅費を個人科研から支出することがなかった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
出張のための旅費や史料データベースなど、研究課題の遂行に不可欠だがまとまった費用のかかるものに、計画的に用いることにしたい。
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