2014 Fiscal Year Research-status Report
歴史叙述にみるエスニシティの研究:ヘレニズム・ローマ期イオーニアー地方を中心に
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25770265
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50548667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古代ギリシア / イオーニアー / ヘレニズム / 神話 / 歴史叙述 / 国際研究者交流 / ギリシア / イギリス |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度は、4月にアテネで開催された国際学会において、ヘレニズム期ミーレートスにおける、神話・歴史叙述の生成、変転に関する学会報告を行った。とりわけ、イオーニアー地方、あるいは周辺のライバル都市との関係に着目したところ、同時期に、近隣諸都市がアピールし始めた諸神話との間に対応関係があり、エミュレーションが行われていたことを明らかにした。また同時代の政治情勢についても検討を加え、前述のエミュレーションをめぐる動きが、同時代の政治力学と相関関係にあることを明らかにした。同内容については、より多くの史料を検討対象に含め、研究を深化させつつ、国内の研究会でも報告するなどして、国内外の研究者と意見交換を行い、視点の有効性について確信を深めた。こうした視点から、古代ギリシア(とりわけイオーニアー地方)の神話叙述・歴史叙述の変転について分析を加えたものはほとんどなく、本研究は、研究上、一定の意義を持ち、古代ギリシアに留まらず、他地域の神話叙述、歴史叙述研究に対しても一定の影響を与えるものとなろう。夏期にはギリシア及び英国に一定期間滞在し、資料収集を行い、これらを元にさらなる分析の精緻化を図っている。また、関連して、紀元前5世紀における3つの神話叙述(ノストイ神話、アウトクトン神話、イオーニアー植民神話)の生成と変転に関して、考古史料も用いながら、同時代の文脈、史料の偏向を精緻に分析することで、オリジナルの分析を加えた。これについては、共著書の一章としてまもなく公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、研究計画どおりに進行している。研究以外の業務負担が想像以上に厳しくなっている中、健康を害しつつも、何とか予定通りの史料分析を行い、それに基づいた研究発表も行っている。ミーレートスに関する神話叙述に関しては、国際学会での報告が4月に行われたことに鑑みれば、論文として執筆するのに、やや時間がかかっていると言えるかも知れないが、史料が散在していること、政治背景が複雑であることに鑑みれば、致し方ないと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度国際学会で発表した原稿を元に、論文を執筆し、投稿することを目標とする。また、ミーレートス以外のイオーニアー地方について、史料収集と分析を本格化し、エミュレーションの状況をより明確化していく。英語論文の執筆及び史料収集のために、夏期に渡英し、研究者らと意見交換を行う。
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Causes of Carryover |
海外で発行された図書1冊がなかなか到着せず、最終的に年度末に到着したのだが、その段階でレートの変動により、予算をオーバーしてしまい、科研費による購入ができなかった。このため、当初、この図書購入のために予定していた金額を繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
少額であるため、1,2冊程度の、古代ギリシア歴史叙述関連図書の購入に充てる。
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Research Products
(3 results)