2015 Fiscal Year Annual Research Report
歴史叙述にみるエスニシティの研究:ヘレニズム・ローマ期イオーニアー地方を中心に
Project/Area Number |
25770265
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
佐藤 昇 神戸大学, 人文学研究科, 准教授 (50548667)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古代ギリシア / イオーニアー / ミーレートス / 歴史叙述 / 神話 / ヘレニズム / 古典期 / 東地中海 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、これまでのイオーニアー地方の都市ミーレートスに関する歴史叙述、神話叙述研究のまとめを行うとともに、ヘレニズム及び古典期の他都市の歴史叙述・神話叙述についても分析を行った。 (1)ヘレニズム期のミーレートスを中心とするイオーニアー地方の神話叙述、歴史叙述について、歴史家断片、碑文史料の分析を行い、とりわけ周辺神域、周辺都市との関係について検討した。この結果、(い)ミーレートスの神話叙述、歴史叙述が、同時代の東地中海を取り巻く政治情勢の影響を受けていたこと、(ろ)ミーレートスの「象徴資本」であるディディマの神域に関する神話がこの時期に数多く産み出され、外交的に利用されていたこと、(は)周辺の神域、都市と相互に影響を与えつつ、競合しながら、歴史・神話を形成していたことを明らかにした。当該地域の歴史叙述に関して、同時代の政治情勢、周辺地域との関係に着目した研究はまだなく、重要な発見であるとともに、同時代の他地域を見る際にも重要な視角を得た。 (2)上に示した状況の特殊性を明確に浮かび上がらせるため、前5世紀のギリシア世界全体に目を向け、ミーレートス、アテーナイ、アマンティアなどの創設神話に注目し、主に歴史家断片、同時代の叙述史料(ヘーロドトス、トゥーキュディデース)を用い、それぞれの変容と歴史的状況について比較検討を行った。これにより、それぞれの神話叙述が、古典期のそれぞれの地域が抱える政治情勢の中で大きく変容していった様子を明らかにし、神話の語られ方が、叙述時の政治、社会構造と密接に関係していたことを示した。この作業を通じ、各事例についてオリジナルな解釈を提示すことができたばかりでなく、上に示したヘレニズム期のイオーニアー地方の特殊性も示すことができた。 (3)また関連して用いた、アッティカ法廷弁論や碑文史料についても、新たな解釈を提示し、学会等で報告した。
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[Book] Aristocracy in Antiquity: Redefining Greek and Roman Elites2015
Author(s)
Nick Fisher and Hans van Wees (eds.), Alain Duplouy, Guy Bradley, Laurens E. Tacoma, Antoine Pierrot, Stephen Lambert, Noboru Sato, Nick Fisher, Olivier Mariaud, James Whitley, Thomas J. Figueira, Gillian Shepherd
Total Pages
390(佐藤昇担当箇所:203-226)
Publisher
The Classical Press of Wales (Swansea)