2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770272
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
野口 久美子 同志社大学, アメリカ研究所, 助教 (00609571)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アメリカ先住民 / カジノ産業 / 経済発展 / 部族自治 |
Research Abstract |
本年度は、本研究で課題とする先住民カジノの発展過程の分析において基軸となる法律「先住民カジノ規制法」の成立に寄与する法的、社会的背景に関する調査を行った。具体的にはまず、法制定につながった1980年代の連邦先住民政策や連邦議会議論など、先住民カジノの合法化にむけた法的、政策的背景について、一次文献(連邦、司法裁判記録とカジノ部族の部族議会議事録、連邦議会公聴会記録、州議会公聴会記録等)と二次文献を用いて整理した。次に、先住民部族のカジノ経営を規定する、同法の実際の適用過程の事例として、カリフォルニア州トュールリヴァ―部族の経営する先住民カジノ「イーグル・マウンテン・カジノ」の設立過程に関する導入的調査を行った。ここでは、部族成員のカジノ設立に向けた動機、地域自治体との交渉過程、さらには、カジノ運営が地域コミュニティーに及ぼした社会的、精神的、文化的影響などについての聞き取り調査を実施した。 調査結果として先住民カジノ規制法は、先住民-連邦関係の基盤となる部族主権(Tribal Sovereingty)の実践としてカジノ産業を部分的に合法化すると同時に、部族カジノ産業に法的規制を適用することによって部族自治にも一定の制限を加える作用があるという両義性を整理し、現代の先住民社会における先住民カジノの意義を議論する上で必要な法的、社会的背景を理解することができた。またこうした調査から、現代のアメリカ社会で大きな議論を巻き起こしている「反カジノ論争」や「Reservation Shiopping」批判をあぶり出すこととなり、次年度以降に扱う予定の、先住民カジノ産業の経営、運営過程やアメリカ社会における先住民カジノの位置づけを巡る諸議論に貢献する、新たな分析要素も発掘することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請所に記載した「研究の目的」の年次予定に沿って調査を行い、所定の成果を上げることができた。本年度の調査実施過程の中で直面した問題点を挙げるとすれば、それはカジノ産業の具体的設立過程を取り上げた二次文献の少なさにある。その背景には、先住民カジノ産業が、その性質上、現代の部族コミュニティーの経済活動と深く結びついていること、故にカジノ産業に対する個々の成員、部族、社会の評価が必ずしも整理された、かつ客観的なものとはなりきれない側面がある。ただこうした問題点は、一方で新たな研究分野としての本研究の意義を高めると同時に、二次文献の欠如を豊富に蓄積されている数的調査結果や今後行う聞き込み調査(故にインタビュイーとの信頼関係の構築)で補うことによって部分的に克服できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究過程は、おおむね申請時の研究計画に沿って進めていく。次年度にはカリフォルニア州トュールリヴァー部族が経営する「イーグルマウンテンカジノ」の具体的設立過程と、その発展、運営過程の調査を行い、部族自治とカジノ産業の関連性をより詳細にな分析につなげていく。具体的には以下の調査を行う。まずイーグル・マウンテン・カジノの設立過程について、その設立に至る部族内議論と、それに対する市、カウンティ、州、連邦、それぞれの段階における契約、規制、協働に関する議論について一次史料収集と関係者への聞き取り調査を行う。次に、カジノ産業の収益金の用途(部族福祉、教育、文化継承、土地購入)から、カジノ産業が部族社会に与えた影響について分析するため、現地視察、地方自治体、部族議会への聞き取り調査、さらには部族成員と周辺自治体職員へのインタビューとアンケート調査を行う。
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