2014 Fiscal Year Research-status Report
韓半島系土器の受容実態からみた古墳時代対外交流の時期的地域的展開
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25770276
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中久保 辰夫 大阪大学, 文学研究科, 助教 (30609483)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 古墳時代 / 日韓交流 / 渡来人 / 初期窯業生産 / 倭系遺物 / 韓式系土器 / 古墳時代土器 / 異文化受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、出土土器資料の考古学的分析をもととした韓半島系土器の器種構成の変遷およびその受容過程を実証し、その時期的・地域的展開より背後にある日韓交流の質的変化を探ることを目的としている。本年度は、韓半島系土器受容過程をまとめつつ、日韓出土ハソウの集成およびその実物観察による系譜関係の把握を中心に研究を実施した。 本年度における特筆すべき実績としては、古墳時代対外交流を2つのモデルとして捉え、その時期的変化を2014年4月に第79回アメリカ考古学会において口頭発表したこと、同年10月に韓半島南西部から出土した倭系土器の資料調査を実施し、その成果をもとに11月に倭系土器の年代とその意義について発表したこと、さらに同月に和歌山県立紀伊風土記の丘秋期特別展のシンポジウムにおいて古墳出土初期須恵器の諸問題について論じたことがあげられる。 資料調査では韓国・萬樹里古墳群、鳳徳遺跡、東林洞遺跡出土土器など、平成27年度に資料調査を予定していた資料を前倒しにして熟覧する機会を得ることができ、資料を実見しつつ、韓国側研究者と議論できたことは計画の前向きな変更となった。また、日本国内では学会参加を通じて、最新の発掘調査情報や研究成果の公表機会を得るとともに、長崎県原の辻遺跡、双六古墳などの遺跡踏査、奈良県布留遺跡、四条大田中遺跡、行燈山古墳などの出土土器資料調査を行った。その成果として、対外交流の質的変化に伴う政治的な変化について考察を深めることができた。 以上の研究成果は、国内外の学会・シンポジウムで発表するとともに、一部を論文として公表した。また、研究を通じて得られた成果は市民講座等のアウトリーチ活動に力をいれることによって還元できるように努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記した研究計画に従って、ほぼ計画通りに遂行できているが、アメリカ考古学会、韓国での国際シンポジウムで研究成果を公表できたことは成果公表という点で研究の発展的な前進となった。とりわけ、古墳時代日韓交流については英語圏での発表が極めて少ないために、日本考古学の国際発信に幾分貢献できたのではないかと考える。 研究成果の公表は、申請書で掲げたテーマのそれぞれについて論文、学会等の口頭発表を通じて成果を着実に発信しており、また土器使用痕分析の分析結果をはじめとしてさらなる成果公表の準備も整えることができた。ただし、資料調査については予定していた資料を中心に実施したが、補足的な資料実見が必要な状況であり、継続的に行う予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
当初計画に沿って研究の総括を平成27年度に実施する予定である。研究の成果は、韓半島系土器受容過程の時期的変遷、地域性、そしてハソウの系譜と波及の史的意義といった論点を中心に論文、学会発表を通じて公開する。 アメリカ考古学会での発表と意見交換を通じ、海外の事例と比較可能なモデル構築の必要性を実感するとともに、着実な資料分析に基づく古墳時代の対外交流論は、海外でも通用すると考えるに至った。日本古代の渡来人研究を比較考古学的な観点から再構築し、その成果を公表とすることも念頭におきたい。
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Remarks |
アウトリーチ活動
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Research Products
(7 results)