2014 Fiscal Year Research-status Report
エジプト先王朝時代における硬質土器の焼成技術に関する考古学的研究
Project/Area Number |
25770280
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
馬場 匡浩 早稲田大学, 文学学術院, 助教 (00386583)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | エジプト / 先王朝時代 / 土器 / 焼成技法 / 黒斑分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、いまだ解明されていないエジプト先王朝時代の硬質土器の焼成技術について、発掘調査と黒斑分析により考察を試みることを目的とする。管見の限りでは硬質土器には煤がべったり付着する顕著な黒斑はなく、このことは燃料と土器が直接触れない「昇焔式窯」で焼成されていたことを示唆する。発掘調査では、この昇焔式窯の発見が究極の目的となるが、現実的にはそれは難しく、まずは当時の熱利用の技術レベルを理解することを実質的な目的に掲げた。対象遺跡は、申請者がこれまで継続して調査しているヒエラコンポリス遺跡11C地区である。ここでは土器焼成施設(軟質土器用)およびビール醸造址が見つかっているが、本年度は、地区の東側で近年あらたに発見された日乾レンガ構造物(9×7m)を対象とした。構造物内部の調査はほぼ終了し、床面に数多くの炉址が存在することが判明した。さらに注目すべきは大量に出土した動物骨である。これについて動物依存体の専門家に分析依頼し、家畜種のウシと淡水魚のナイルパーチが圧倒的に多いことが判明した。炉址の存在を考慮すると、こうした動物を燻製にする大規模な食品加工場あったと考えられる。近年の調査により、土器焼成、ビール醸造、燻製など、ここが熱利用に特化した集約的な生産地区であったことが明らかとなった。これら遺構の年代は紀元前4千年紀中葉であり、この時期にパイロテクノロジーの大きな前進があったようだ。同じ頃、高温焼成を要する硬質土器が出現するが、それは熱利用技術の全体的な向上に呼応したものと考えられる。 黒斑分析については、イギリスの大英博物館にて資料調査を実施した。黒斑分析に耐えうる完形土器は60点ほど収蔵されているが、今回は23点の実測・観察を行った。顕著な黒斑は皆無であるものの、白色の接触黒斑が確認された。現在整理・分析中だが、接触黒斑から焼成時の据え方や窯の規模が推察できるものと思われる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の二つの柱となる、現地における発掘調査と博物館資料の黒斑分析は、どちらも順調に進めることができた。
|
Strategy for Future Research Activity |
来年度は再度、大英博物館での調査を実施し、残りの完形土器(30点ほど)の黒斑観察を行い資料の増加をはかる。
|