2013 Fiscal Year Research-status Report
古墳時代の銅鏡の集成と生産・流通・保有に関する総合的研究
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25770281
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
下垣 仁志 立命館大学, 文学部, 准教授 (70467398)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 倭製鏡 / 保有 / 首長墓系譜 / 銅鏡データベース |
Research Abstract |
銅鏡は古墳時代の遺物の中核的存在であり、その解明は古墳時代の特質及び歴史的意義の闡明に直結する。本研究は、銅鏡の網羅的な集成と編年作業に立脚して、その生産・流通・保有の様相を総合的に解き明かし、当該期の社会的・政治的諸関係を追究することを目的としている。 今年度は弥生・古墳時代の遺跡から発見された銅鏡画像の網羅的集成と、それらの鏡自体のデータ及び出土遺跡の情報データベースの構築を中心的に行った。国立歴史民俗博物館が作成した「日本出土鏡データ集成」と筆者作成の『倭製鏡一覧』及び三角縁神獣鏡データベースをもとに、前者のデータを大幅に修正・刷新・増補した。データベースのいっそうの拡幅と画像とのリンクを作成することが次年度以降の目的となる。また、古墳時代銅鏡に関する文献を悉皆的に集成・検討し、次年度以降に実施する予定である、弥生時代・古墳時代の銅鏡の学史的検討を踏まえた総合的研究の下準備を十全に行った。 今年度はデータベース作成を主眼においたため、論文・研究発表はさほど行わなかった。しかし、以下の研究を実施した。まず、論文「鏡の保有と「首長墓系譜」」にて、銅鏡保有の実体を列島の諸地域を対象にして実施し、本研究で推進してゆく銅鏡保有の実態について、基礎的研究を提出した。また、国際日本文化研究センターの研究会において銅鏡保有の意義について口頭発表を行った。考古学研究会関西例会シンポジウムでは、銅鏡の長期保有の開始と古墳時代の開始との密接な関連を解明した。さらに京都府芝ヶ原古墳の報告書では、倭製鏡出現期における様相を実証的に追究した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の軸となる、列島における古墳時代の銅鏡の悉皆集成とデータベース・集成表の構築(A)は、順調に進んでおり、当初の予定であった古墳時代だけではなく弥生時代も包括して一層有用なデータベースを構築しつつある。小地域ごとの銅鏡流入の様相の分析(D)及び首長墓系譜内での銅鏡の流入・保有の検討(E)については、論文と研究会ですでに梗概を公表している。中国製鏡・韓半島出土鏡の検討(F)については、今春に韓国で銅鏡資料を実見した。以上については当初の予定を上回り、(1)と評価できる。 他方、データベース構築を優先しているため、古墳時代中期・後期の倭製鏡の編年(B)及び銅鏡の分布の時期的変動の政治的背景の追究(C)については、殆んど未着手状態であり、(3)と評価できる。 以上から総合的に判断して。(2)おおむね順調に進展している、と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究は、おおむね順調に実施し得た。当初は、古墳時代の銅鏡集成とその保有・流通・製作を通じた歴史的意義の解明を目標に据えていたが、予想よりもデータ集成が順調に進んだため、弥生時代も集成対象に加えて、より総合的・包括的なデータベース構築を目指すべく予定を上方修正する。また、銅鏡研究に関する文献の検討作業が予想よりも進んだため、銅鏡の研究史を悉皆的に踏まえた検討を追加することにする。 平成26年度の推進方策は、当初の通り、データ収集と調査を基軸にして進めてゆく予定である。ただし、まずはデータベースの完成を目指し、中期倭製鏡及び後期倭製鏡の編年構築と首長墓系譜内での銅鏡の流入・保有状況の検討などは、秋季以降に本格的に着手することにする。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度には、未使用金の残額2,820円が生じたが、予定していた中国書などが予定より安く購入できたためである。 日本列島出土鏡のデータベースの完成に向け、物品費(図書資料・複写費・ソフト費等)を中心に研究費を使用する予定である。
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Research Products
(9 results)