2016 Fiscal Year Annual Research Report
The comparative studies of changes in tableware composition and way to use in ancient East Asia.
Project/Area Number |
25770285
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Research Institution | Nara National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
小田 裕樹 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 都城発掘調査部, 研究員 (70416410)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 考古学 / 東アジア / 食器構成 / 食事作法 / 比較研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、飛鳥時代後半から奈良時代にみられる「律令的土器様式」の成立と展開の歴史的背景について、東アジア諸国における食器構成と食事作法の変化という視点から新たな位置づけをおこなうことを目的とする。研究最終年度にあたる本年度は、補足の資料調査と分析・考察を実施し研究の総括をおこなった。 本研究の成果から、古代日本の土器様式の変化について、日本列島の伝統的食事様式を基層とし、東アジアに共通する大陸的な食事様式の受容による変容過程として捉え直すことができるとの見通しを得た。飛鳥時代前半段階(飛鳥Ⅰ・Ⅱ)の食器構成は、古墳時代以来の食器に金属器を指向する新たな器種が加わった二系統からなる構成(「飛鳥時代前半期土器様式」と仮称)である。両者は小型で丸底の杯類という点で、古墳時代の食器構成と共通する。また、飛鳥時代後半以降(飛鳥Ⅲ以降)の食器構成は、中国・朝鮮半島と共通する台付・平底食器主体の構成である。この台付・平底食器を基調とする食器構成が「律令的土器様式」の本質的要素と考えられる。 「飛鳥時代前半期土器様式」から「律令的土器様式」への変化は、中国・朝鮮半島と共通する食事様式の受容により、食器を手に持ち手食する古墳時代的な食事作法から、台の上に食器を置き匙・箸で食物を口に運ぶ大陸風の食事作法へと変化したことを反映すると解させる。また、これらの食器構成の変化は宮都のみならず、列島各地で変化を与えていたとみられる。当該期の列島各地の土器様相をみると台付食器の出現や平底化が認められ、「律令的土器様式」の影響による変容と捉え直すことができるとの見通しを得た。 本研究の成果は、遺跡から普遍的に出土する土器に注目することにより、律令国家の成立にともなう日本古代社会の変容について、大陸に由来する新たな要素の受容や古墳時代以来の基層文化の変容という視点から議論できる可能性を提起した点で重要である。
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