2015 Fiscal Year Research-status Report
中国殷周王朝における馬匹生産体制の動物考古学的研究
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25770289
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊地 大樹 京都大学, 人文科学研究所, 特別研究員PD (00612433)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 馬 / 殷周王朝 / 馬匹生産 / 動物考古学 / 秦律 / 食性分析 / 三次元計測 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、陝西省考古研究院の協力のもと、豊鎬遺跡(西周時代)と寨頭河遺跡(戦国時代)の2遺跡から出土した馬の実地調査をおこない、形態学的データの充実に努めたほか、湖北省文物考古研究所が発掘調査している、棗陽郭家廟墓地(春秋時代)出土馬のデータ収集をおこなった。 豊鎬遺跡は西周王朝の中心地のひとつと考えられており、昨年度分析をすすめた少陵原西周墓地遺跡の分析結果と合わせ、西周王朝における馬匹生産の実態をより詳細に議論することができるようになった。また、寨頭河遺跡は戦国時代の長城地帯に位置する遊牧民の墓地遺跡である。すでに戦国秦国の馬については閻家寨(空港緑地)祭祀坑で分析を進めており、当時の秦国と遊牧民における馬の飼養管理および利用形態の比較が可能となった。また、棗陽郭家廟墓地(春秋時代)は曽国に関連する遺跡である。これにより、時代と地域が広がり、ようやく歴史学的な解釈ができる基盤ができた。さらに、昨年度新たに確立した分析手法の向上に努めるとともに、「秦律」を中心とした馬匹生産にかんする記述の整理を進めた。 このほか、奈良文化財研究所の(故)松井章氏と進めていた、三次元計測による動物骨の形態比較の共同研究成果として、2015年12月に奈良文化財研究所のデータベース上で「3D Bone Atlas Database」(https://www.nabunken.go.jp/research/environmental/gaiyo.html)を公開した。これにより、実地調査に標本や骨格図譜を持ち込むことなく、同定作業が可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も引き続き基礎データの集積に努めるとともに、新たに確立した分析手法をもとに、各時代ごとの遺跡資料の分析をすすめ、その結果が古典籍や出土文字資料にみられる内容と照合できたことは、大きな収穫であった。こうした成果は、国内外の学会で発表し、高い評価をいただいている。また、新たに公開をはじめたデータベースも高い反響を得ている。このことから、本研究は、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、実地調査に基づく実証的な検証を軸としているため、引き続き比較データの集積に努めるが、次年度は最終年度となるため、これまで進めてきた分析成果をまとめ、研究協力機関と協議し、学術雑誌や報告書で順次公開していく。
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