2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25770290
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Kyushu Historical Museum |
Principal Investigator |
小嶋 篤 九州歴史資料館, その他部局等, 研究員 (60564317)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 大宰府 / 兵器 / 鉄器生産 |
Research Abstract |
今年度の研究では大宰府成立時に直轄地であった筑前国や、その隣接地である筑後国の資料を重点的に検討した。具体的な検討方法は、古墳時代から平安時代にかけての鉄鏃を網羅的に集成し、出土遺構ごとに組成・数量を整理した。また、その集成結果に基づいて、作図が不十分な資料や資料的価値が高い資料を抽出し、資料調査を実施した。とくに全国的にも著名な官衙遺跡である福岡県小郡官衙遺跡で出土した鉄鏃の実態解明は、本研究の重要な成果である。小郡官衙遺跡出土鉄鏃は出土数の多さのみが強調され、「鉄鏃千余本」という情報のみが一般的に流布してきた。本研究では資料観察に基づいて、資料の残存状況から出土(埋没)状況を復元し、鉄鏃の総数と組成を明らかにした。 以上の検討を統合した結果、大宰府出土鉄鏃の年代的位置づけを当該地域の編年観に即した形で絞り込むことができた。古代山城の記事が頻発する7世紀後半は、主力兵器となる鉄鏃の製造量が多く、筑紫大宰体制を経た大宰府体制下でも長期間にわたり保管・運用されたとの仮説を裏付ける研究成果と評価できる。本研究の成果の一部は、発表「大宰府の兵器」『第10回古代武器研究会』(2014・3)で公表した。また、論文「小郡官衙遺跡出土鉄鏃の研究」『九州歴史資料館研究論集』39(2014・3)にまとめた。 これらの兵器自体の研究と並行して、大宰府を中心とした九州北部の鉄器生産の検討も進めた。具体的には発掘調査報告書『大宰府政庁周辺官衙跡V』(2014・3)の執筆を通じて、大宰府中枢部での生産活動の変遷を通時的に整理した。また、鉄器生産の燃料となる木炭に関する研究成果を論文「九州北部の木炭生産」『福岡大学考古学論集2』(2013・12)、発表「山岳霊場と山林利用の考古学的研究」『首羅山をとりまく聖なる山々』(2013・8)にまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成25年度の当初計画では、①文献史学と考古学の学史整理、②資料集成、③資料調査を実施する予定であった。②資料集成と③資料調査は双方向的に実施でき、当初の予定通り、比較的短期間で研究成果をあげることができた。平成25年度段階でおおむね大宰府中枢の様相は把握できたと言える。 問題となるのは、①文献史学と考古学の学史整理である。自身の専門分野である考古学については体系的な整理が進んでいるが、重厚な文献史学の学史整理が不十分な状況にある。とは言え、平成26・27年度に計画していた④資料の編年・分類作業、⑤兵器製造を支える遺構の研究を前倒しで進めており、すでにその研究成果を学会発表や論文の形で適宜まとめている。 以上の点を鑑みると、本研究の目的は総体的には順調に達成しつつあるが、特定分野では作業が足りていないと結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究では大宰府を中心とした九州北部の検討を重点的に進めた。その過程で集成作業や資料観察の手順をかため、研究目的達成にいたる問題的を明らかにできた。平成26年度の作業では、前年度作業のノウハウをふまえ対象地域・資料を拡大して実施する。その研究成果については、平成25年度と同様に学会発表や論文という形で適宜公表していく予定である。 現在作業が遅れている文献史学の学史整理については、平成26年度に重点的に行うこととする。とくに書籍購入等の手段による資料確保を優先的に進める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は考古学的分野の研究を優先して作業を進めたため、文献史学の学史整理のための書籍購入の準備が遅れたことが主要要因となる。また、大宰府中枢の検討を優先したことにより、遠距離調査地での調査費が次年度に繰り越すことになった。 平成26年度は文献史学の学史整理を優先的に進め、書籍購入等の資料収集を積極的に実施する。そして、26年度以降は遠隔地での調査により、旅費による使用額が大きくなる計画である。また、平成25年度に実施した資料集成のノウハウに基づいて、26年度は人件費・謝金を使用した複数人での集成作業を行う。
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Research Products
(4 results)