2014 Fiscal Year Research-status Report
近代日本における地域の経済発展の論理と構造に関する歴史地理学的研究
Project/Area Number |
25770293
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
湯澤 規子 筑波大学, 生命環境系, 准教授 (20409494)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 歴史地理学 / 農村社会学 / 農業史 / 地域経済 / 近代 / 葡萄栽培 / 葡萄酒醸造業 / 横手殖林社 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、近代日本における地域の経済発展の論理と構造を、歴史地理学の視点から解明することを目的としている。近代においていは、国民国家経済のみならず、地域の内発性に基づいた独自の論理による経済発展がみられたことを検証するため、平成26年度は下記の課題に取り組んだ。 本プロジェクトの課題1として設定した地域実証研究①「山梨県における葡萄栽培と葡萄酒醸造業の地域史」については、平成25年に発表した「山梨県八代郡祝村における葡萄酒会社の設立と展開―明治前期の産業と担い手に関する一考察-」(『歴史地理学』第55巻第3号)を発展させ、平成26年10月1日~11月30日まで甲州市立勝沼図書館にて史料展(時代を拓く有志の群像 葡萄酒づくりの幕開けと勝沼の人びと)と講演(先人の足跡をあるく-農書と『葡萄三説』の世界-)を行った。これらの活動は、研究成果の社会的還元という意味を持ち、さらには地域史料の保存と利用への社会的関心を高める役割を果たした。 メルシャン勝沼ワイナリーが所蔵する文書群、高野家が所蔵する文書群、甲州市が所蔵する宮崎家文書群などについては、引き続き閲覧と撮影を実施している。 課題2として設定した地域実証研究②「東北地方における林業と木材加工業の地域史」については、昨年度に引き続き、秋田県横手市の理解と協力を得て、「横手殖林社」に関わる史料群(明治期~現在)の整理と目録作成作業を進めた。封筒づめが完了し、目録の完成を目指している。明治・大正期の分析を進める基礎作業として、当時の秋田県林政をはじめ、社会経済的状況を把握するための文献史料収集も開始した。今後は史料の撮影と分析を進めていく予定である。
さらに、上記2つの事例地域を相対化するための比較研究として、愛知県尾西地域における産業地域形成に関する史料収集も開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例研究のフィールドである山梨県甲州市、秋田県横手市において、重要な史料の発見とその整理、撮影を順調に進めることができている。昨年度「今後の推進方策」とした課題に対する進捗状況は以下の通りである。
①諸制度や法律の整備に関する情報を集め、分析に加える:特に農業分野における農商務省の動向を調査し、三田育種場の場長であった前田正名と勝沼との関係について分析を進めた。 ②「技術」の変化とその担い手に注目する:明治期の勝沼に醸造技術を伝えた2人の青年(土屋竜憲と高野正誠)の手記や農書の分析を開始した。 ③比較研究の視点を重視:山梨県甲州市と秋田県横手市の事例を相対化するために、愛知県一宮市において近代の毛織物産業を中心とした産業史研究に着手した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は次の諸点を具体的な課題とする。
①本格的な近代化を迎える明治中後期以降の分析を進める。 ②地域の経済発展の論理と構造を明らかにするために、産業史的視点だけでなく、社会史、日常史的視点を加える。それによって、近代における生産と生活の構造的転換を明らかにする。 ③引き続き、比較研究事例に関する基礎作業を蓄積し、研究の総括に向けた考察を進める。
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