2014 Fiscal Year Research-status Report
オルタナティヴフードシステムの構造と機能に関する地理学的研究
| Project/Area Number |
25770294
|
|---|
| Research Institution | Nagoya University |
|---|
Principal Investigator |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
| Keywords | オルタナティヴ / フードシステム / 自然 / エビ養殖 / インドネシア |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オルタナティヴフードシステム（Alternative Food System, AFS）の形成が、食料取引における「社会的・環境的公正の確保」やその「経済的存立可能性の実現」にとっていかなる役割を果たしうるのかを考察することである。その際の具体的な分析タスクとしては、「日本におけるAFSの全国的な展開プロセスとその今日的特質」の把握（課題①）、「日本に基軸を置きつつもグローバルに展開するAFS（GAFS）の構造的特質と機能」の検討（課題②）、「従来型の工業化されたグローバルフードシステム（GFS）とGAFSとの社会的・経済的異同」の同定（課題③）が挙げられる。本年度主に取り組んだのは課題②と課題③である。課題②に関しては、前年度に調査を実施した日本のフェアトレード団体(A社、東京都)の「エビ供給体系の特質」が生み出されるメカニズムを明らかにするための理論的な枠組みを構築する作業を行った。具体的には、「自然環境に埋め込まれた生産様式」を生み出す人間と自然との相互作用を理解するための視点を、「自然の地理学 geographies of nature」の議論を踏まえつつ検討した。課題③については、前年度に引き続いて、エビのGFSの実態（「生産・流通・消費の空間構造」、「取引におけるアクター間の関係性」、「介在アクターの動機・目的・行為」）の把握を行った。具体的には、インドネシア（アチェ州）において、集約的な養殖エビ養殖に関するフィールド調査・資料収集を行った。またその成果の一部を、The 5th Biannual International Conference on Aceh and Indian Ocean Studies (ICAIOS)で口頭発表するとともに、 Japanese journal of human geographyの66巻6号に寄稿（Changing agri-food systems in the global economy）した。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、おおむね順調に進展した。課題②については、エビ養殖をめぐる「自然と人間の関係性」を解釈する上で有効な視座を、「自然の地理学」における既存研究をレビューすることで検討することができた。この作業を通じて得られた知見は、平成27年度以降のフィールドワークを行う上で重要な理論的枠組みを提供してくれる。課題③については、前年度に引き続きエビ養殖池のオーナー・労働者を対象としたフィールドワークを積み重ねることで、グローバル化・工業化したエビのフードシステムの構造的な特質を把握することができた。
|
| Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り研究を推進していく予定である。課題①に関しては、コメの加工業を対象として、いかに日本国内でAFSが展開してきたのかを制度の変容とともに検討する。課題②については、A社への聞き取り調査を再度実施するとともに、A社がエビのフェアトレードを行っているインドネシア（東ジャワ州シドアルジョ）でのフィールドワークに向けた準備を行う。課題③に関しては、引き続きインドネシア・アチェ州での養殖池オーナー・労働者への聞き取りを積み重ねていく。いずれの課題についても、ある程度成果が出た時点で、学会発表・論文投稿を行う。
|
| Causes of Carryover |
2015年度に海外出張(インドネシア)を予定しているため，それに向けて2014年度分の助成金を繰り越した．
|
| Expenditure Plan for Carryover Budget |
2014年度分の繰越金は，2015年度のインドネシア出張に充当する．
|
