2015 Fiscal Year Research-status Report
オルタナティヴフードシステムの構造と機能に関する地理学的研究
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25770294
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
伊賀 聖屋 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (70547075)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | オルタナティヴフードシステム / グローバルフードシステム / 社会・技術・自然のネットワーク / エビ養殖 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、オルタナティヴフードシステム(Alternative Food System, AFS)の形成が、食料取引における「社会的・環境的公正の確保」やその「経済的存立可能性の実現」にとっていかなる役割を果たしうるのかを考察することである。その際の具体的な分析タスクとしては、「日本におけるAFSの全国的な展開プロセスとその今日的特質」の把握(課題①)、「日本に基軸を置きつつもグローバルに展開するAFS(GAFS)の構造的特質と機能」の検討(課題②)、「従来型の工業化されたグローバルフードシステム(GFS)とGAFSとの社会的・経済的異同」の同定(課題③)が挙げられる。本年度主に取り組んだのは課題②と課題③である。課題②に関しては、日本のフェアトレード団体(A社、東京都)の「エビ供給体系の特質」が生み出されるメカニズムを、科学技術社会論における技術・社会ネットワークの議論を踏まえつつ考察した。その際、特定の生産空間が、①「食料生産に関わる諸アクター間の結びつきやその形成・再編」、②「それらにより生み出される人間アクターの行為主体性」を通じていかに構築されるのかを重点的に検討した。課題③については、引き続き、エビGFSの実態(「生産・流通・消費の空間構造」、「取引におけるアクター間の関係性」、「介在アクターの動機・目的・行為」)の把握を行った。具体的には、インドネシアのアチェとジョグジャカルタにおいて、集約的な養殖エビ養殖に関するフィールド調査・資料収集を行った。これらの成果は、経済地理学会中部支部例会(2015年12月、中部大学)と日本地理学会春季学術大会(2016年3月、早稲田大学)において口頭発表した。また、これらにも関連する論文として、「大規模ローカルフードシステムにおける近接関係―酒造業者と酒米生産者の提携に着目して―」と「知識・技術構築とローカルフードシステム」をそれぞれ人文地理と経済地理学年報に投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の研究は、おおむね順調に進展した。課題②については、前年度に構築した研究枠組みに依拠しつつ、現実のオルタナティヴフードシステムが生成されるメカニズムを解釈することができた。課題③については、前年度に引き続きエビ養殖池のオーナー・労働者を対象としたフィールドワークを積み重ねることで、工業化したエビのフードシステムの構造的な特質を把握することができた。今年度は、インドネシア・ジャワ島においてもフィールド調査を実施することができたため、これまでのスマトラ島のエビ養殖とは異なる知見を得ることができた。なお課題①に関しては、若干進捗状況が遅れている。今後は、コメ加工業を対象として、いかに日本国内でAFSが展開してきたのかを制度の変容とともに検討したい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も当初の計画通り研究を推進していく予定である。課題①に関しては、「米麦加工食品企業実態統計調査年報」などにより加工用米の供給体系の構造的特質やその空間性を描出する作業を行いたい。課題②については、一昨年度に引き続き、A社への聞き取り調査を実施するとともに、インドネシア(東ジャワ州シドアルジョ)でのフィールドワークを行う。課題③に関しては、引き続きインドネシア・アチェ州やジョグジャカルタでの養殖池オーナー・労働者への聞き取りを積み重ねていく。
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Causes of Carryover |
フェアトレード企業A社(東京都)とそのサプライヤー(インドネシア)への聞取り調査を平成28年度に追加で実施することになったため、次年度の使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
フェアトレード企業A社とサプライヤー(エビの生産者)への聞き取り調査を平成28年度中に実施し、その際の旅費として使用する。
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