2016 Fiscal Year Annual Research Report
A comprehensive study of emotional geography: toward effective suicide prevention in Japan
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25770300
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
村田 陽平 近畿大学, 文芸学部, 准教授 (10461021)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 感情の地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、これまでの研究成果を踏まえて、日本の多様な環境と人間の「生」との関係性を検討した。第一に、日本の受動喫煙対策の遅れが、多くの人々の健康環境にとって有害なものになっており、その背景には日本のタバコ産業の教育戦略があることを明らかにした。第二に、「杉小口スリット材」に注目し、その効用と可能性を考察した。杉小口スリットとは、空気を浄化する力が強い杉の効能をさらに引き出すため、杉の板に独自の溝加工を施したものであり、その効用については環境学などの視点から以下の5点にまとめられる。①二酸化窒素やホルムアルデヒドなどを吸収し、空気を浄化する。②カビ・ダニ・ウィルスの増殖を抑え、室内環境の湿度を調整する。③免疫機構に働きかけることで、身体の自然免疫力が高まり、身体の抵抗力が強化される。④体内時計を整え、安定と鎮静をもたらす脳内物質の分泌を促すことで、身体の自然なリズムを回復させる。⑤スリットの木目が、無機質な内装などに比べて生理的に安定させる。このような特徴をもつ杉小口スリットを室内空間に配置し、その空間に入った人間がどのように感じるのかを考察した。その結果、一定程度の人々にとって、その空間が居心地の良い場所(居場所)になりうることが明らかになった。そこから、「居場所」という空間的な視点が、感情の地理学の理論構築にとって有意なものであることを考察するとともに、今後の日本の地域の自殺対策には多様な居場所の構築が求められることを検討した。
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