2013 Fiscal Year Research-status Report
中国における定住政策とエスニックカテゴリーの変遷―山地民、水上居民を対象として
Project/Area Number |
25770302
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
稲澤 努 東北大学, 東北アジア研究センター, 教育研究支援者 (30632228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エスニシティ / 定住政策 / 中国 / 水上居民 / 山地民 / 広東省 / 民族政策 |
Research Abstract |
本研究の目的は中国建国初期の対水上居民、山地民政策の分析により、非定住民が定住する過程でエスニックカテゴリーがどのように再編されたのかを明らかにすることである。 世界各地には、漂海民、山地民、遊牧民など、定住民とは異なるエスニシティをもつ非定住民が存在し、人類学の考察対象となってきた。本研究が考察対象とする中国南部にはかつて、漁業を生業とする水上生活者、焼畑農耕を生業とする山地民が存在した。前近代の文献上では、水上居民は「蜑」、山地民は「瑶」などとされた。中華人民共和国建国後においては、「蜑」は漢族とされたが、「瑶」は少数民族として認定されている。 本研究では、政府文書と広東省陽江市における水上居民に客家やヤオ族を加えた事例分析を行うことにより、現代中国において非定住民エスニックカテゴリーが形成されるにいたった歴史的経緯を解きほぐす。 本年度は、主として档案等文書資料に分析を行った。広州市の中山図書館および広東省档案館において、陽春県等来年度の調査に必要な基礎資料の閲覧、および建国時から70年代までの民族政策に関する資料の閲覧を行った。その結果、50年代の基本概要に関する資料や、2014年度に予定している調査に必要な予備的情報等を入手した。 また、梅州市における調査では、梅州県档案館ならびに嘉応大学客家研究所の文書資料閲覧に加え、元水上居民から彼らの家族史の聞き取りを行い、陸上がりの過程と、梅州市におけるエスニックカテゴリーの変遷についての有意義な資料を入手できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた現地の档案館、図書館での資料閲覧に関しては、「開放档案」とされているものでも一部閲覧許可のおりない資料が存在し、複写も制限されていたので、当初予定していた訪問先を変更するなどの調整は要したものの、おおむね閲覧できた。 加えて、梅州市での調査を行い、文献に加え、当地の元水上居民からの聞き取りを行うことができた。従って、档案分析は当初予定にやや足りない面もあるものの、梅州でのデータ収集の状況を鑑みれば、おおむね予定の水準に達している。
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Strategy for Future Research Activity |
広東省陽江市におけるフィールドワークを行う。6月に予備調査、夏季に本調査の予定である。6月の予備調査では、陽江市の図書館、档案館における資料調査と、調査候補地の視察ならびに地元関係者との打ち合わせを行う。また、調査助手の選定を行う。 助手と緊密な打ち合わせをしたうえで、8月から9月にかけて本調査を行う。陽江沿岸の漁民集落、陽春県内の内陸河川の元水上居民およびその周辺の客家、ならびに陽春県山間部のヤオ族集落において、祖先来歴、定住の過程、集団の呼称、通婚関係などに関する聞き取りを行う。同時に、民俗一般に関する聞き取りも行い、民族誌的空白地点である広東西部の民族誌作成も同時に目指す。 一部档案が閲覧不可であることへの対応さくとして、実際に現地社会でどのような政策がおこなわえたのかを聞き取りを中心に解明することで対応する。聞き取りは、インフォーマントの同意を得たうえで行い、データ利用に際してもプライバシー等を侵害をしないよう配慮する。
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