2015 Fiscal Year Annual Research Report
中国における定住政策とエスニックカテゴリーの変遷―山地民、水上居民を対象として
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25770302
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Research Institution | Shokei Gakuin College |
Principal Investigator |
稲澤 努 尚絅学院大学, 総合人間科学部, 准教授 (30632228)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | エスニシティ / 資源化 / 民俗文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度には、日本文化人類学会研究大会にて昨年度までの成果を発表した。近年の中国において、民俗文化・民族文化の資源化が経済的な利益以外のものも追及してなされていることや、そうはいっても資源化を積極的に行う地域とそうでない地域との双方が存在することなどを広東の山地民・水上居民を事例に指摘した。その際に発表時に諸先生方から受けたコメントを踏まえ、夏季にさらに追加調査を行った。 この追加調査では中国広東省の陽江市と汕尾市、ならびに広州市において、文献収集ならびに聞き取り調査を行った。「漁民」やヤオ族など民族あるいは地域に特徴的だとされる歌などを資源化し、各地での大会などに参加している人々の実情に主な焦点を絞り情報を収集した。 また、広州市の水上居民文化を展示している小さな博物館も訪問した。時間的制約から詳しい聞き取りは次回以降に持越しとなったが、展示を請け負ってきた職員と面識を得ることができた。そのため広州市における水上居民文化の資源化のされ方について、その歴史的経緯と現況を詳しく知るための準備をすることができた。 本研究によって、少数民族とされた人々のほうが、漢族となった人々よりもより早期に文化の資源化がなされたことは確認された。それと同時におなじ少数民族、あるいはおなじ「漢族」の水上居民ではあっても、その文化の資源化のされ方は、経済状況やリーダーの有無などによって大きく異なることも確認された。特に経済的利益のみならず、文化的な地位の向上を目指した資源化の動きは注目に値する。今後は、時間的・経済的制約により情報収集が十分に行えなかった博物館での展示の調査を行い、これまで得たデータのより精緻な分析も行う予定である。
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Research Products
(3 results)