2016 Fiscal Year Annual Research Report
An anthropological study of images of place, and landscape, in narratives and artworks concerning war/conflict memories
Project/Area Number |
25770306
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
酒井 朋子 東北学院大学, 教養学部, 准教授 (90589748)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 記憶 / 風景 / 日常 / 紛争 / アイルランド / チリ / 展示 / 国際情報交換 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、戦争・紛争あるいは災害の記憶における風景の重要性を探求するものである。記憶は意図的に「覚えよう」「思い出そう」とするものであるが、外部から引き出されるものでもある。その受動性の側面とも強く結びついた記憶風景にとくに注目して考察することが本研究のねらいであった。 さて、私は2015年度に出産と育児のため1年間研究を休んでいたが、2016年度には研究を再開した。まずクロアチアで5月に開催された国際人類学・民族学科学連合にてパネルを開き、研究報告を行った。「場所」「風景」に関連する戦争・紛争・震災の身体的記憶に焦点をあてたものである。私は司会を行うとともに、身体感覚に依拠して浮かび上がる歴史記憶についての理論整理と、フィールドからの事例報告をまじえた発表を行った。パネルには国内からほか3名が参加し、植民地経験、戦争博物館、津波被災地に着目して報告を行った。またユーゴスラビア内戦を研究するヨーロッパの人類学者2名がパネルに参加し、「写真風景にみる内戦の記憶」「屋外記念碑にみる民族主義」について発表した。今後もパネル参加者とのつながりを保ち、共同研究の可能性を探りたい。 さて、本研究の主眼の一つとして、チリの軍事独裁期に発達したアルピジェラというタペストリーにみる「風景と記憶」の問題があったが、2016年9月にはサンティアゴへの現地調査が実現した。キュレーターのロベルタ・バチチ氏(チリ出身北アイルランド在住、Conflict Textiles)およびパリ大学博士課程のアルベス氏との共同調査で、アルピジェラの作り手への聞き取り調査と貧困区ポブラシオンの調査、サンティアゴの記憶博物館の視察などを行った。その成果は2017年2月に『比較文化研究』に論文として発表したほか、2017年5月からは、仙台、京都、長崎を巡回する展覧会として公開する。
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Research Products
(8 results)