2014 Fiscal Year Research-status Report
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25770309
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Research Institution | Tama University |
Principal Investigator |
堂下 恵 多摩大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90434464)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 象徴的な自然 / 越境 / 景観 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「象徴的な自然」が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明するのが目的であり、平成26年度は象徴的な自然の越境を捉える理論的枠組みを「景観/landscape」の概念を軸にして構築することを目指し、また、象徴的な自然の越境のメカニズムを解明するために実地調査を実施する計画を立てた。 理論的枠組みの構築は文献調査を中心におこなっており、平成27年度内に余裕をもって完了できるように研究を進めた。象徴的な自然の越境のメカニズムを解明するための実地調査は、平成26年9月にイギリス・コーンウォール州と、平成27年3月にメキシコ・イダルゴ州で実施した。 イギリス・コーンウォール州の実地調査では、調査対象となる田園の景観が生業に関連する文化と自然の組み合わせで生成されていった経緯、低迷する生業に代わって景観が観光や地域交流等の目的で利用される様相、その変遷に対する地域住民の重層的な意識、等に関する質的なデータを収集した。さらには景観の形成や保全、人々の利用が全てグローバリゼーションの潮流の中で位置づけられると論議可能なデータを収集できた。加えて、同州からの移住者がメキシコ・イダルゴ州レアル・デル・モンテで生業を通じて類似の景観形成に寄与し、その景観が観光利用されていることを、イギリス・メキシコの両関係者から把握した。深慮の結果、両地域の関連を精査することは本研究にとても有用だと判断し、当初予定していた南米の調査地を変更しメキシコ・イダルゴ州での実地調査を開始した。 平成26年度までの途中成果は、日本文化人類学会50周年記念国際大会等で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、「象徴的な自然」が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明するため、当初はSATOYAMAイニシアティブを事例に文献調査と国内外での実地調査をおこなう計画であった。だが、平成25年度の研究活動を踏まえて、平成26年度以降は「景観/landscape」の概念に着目して研究を進めることにし、この概念を軸に理論的枠組みを構築する計画を立てた。理論的枠組みの構築は平成26年度中に目途が立つのが望ましかったが、完了するのは平成27年度中になる見通しである。 また、象徴的な自然の越境のメカニズムを解明すべく国内外での実地調査を計画していたが、平成26年9月に実地調査を行ったイギリス・コーンウォール州での情報から、当初調査地として予定していたSATOYAMAイニシアティブに関連するペルーの保護地域ではなく、同州と深い関わりを持ち、類似の景観を観光等で同じように活用しているメキシコ・イダルゴ州で調査したほうが本研究の目的により合致すると判断できたので、調査地を変更した。その結果、研究成果の方向性・内容は明確になりつつあるが、調査地を変更したため実地調査全体の進捗が予定よりも遅れた。 以上の状況から、研究成果をより良い形で出すべく研究は進んでいるが、当初の計画からはやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は「象徴的な自然」が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明するのが目的である。最終年度となる平成27年度は以下の研究活動を実施し、研究成果を結実させていく。 1.象徴的な自然の越境を捉える理論的枠組みを、文献調査を中心に「景観/landscape」の概念を軸にして構築する。 2.象徴的な自然の越境のメカニズムを解明すべく、メキシコ・イダルゴ州パチュカ市およびレアル・デル・モンテで実地調査を実施する。夏期と秋期を目途に2回実施し、現地関係者から本研究に関連する情報を最大限収集するとともに、秋期に実施される祭事で参与観察をおこなってイギリスでの同様の祭事における参与観察結果と比較する。メキシコでの調査結果は、これまでに実施した日本およびイギリスでの実地調査結果と照らし合わせて、象徴的な自然の越境のメカニズムについての結論を導き出す。 3.平成25年度からの調査研究成果を口頭および論文で発表していく。
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Causes of Carryover |
本研究は象徴的な自然が越境する様相を精査して脱領域化・再領域化するメカニズムを解明することを目的としている。平成26年度は国外での実地調査としてイギリス・コーンウォール州とペルーの保護地域での活動を予定していたが、平成26年9月にイギリス・コーンウォール州で実地調査を行った際に、メキシコ・イダルゴ州レアル・デル・モンテで、イギリス・同州からの移住者とのかかわりによって類似の景観が形成され観光等で活用されていることが判明した。また、イギリスでの調査時にメキシコの関係者からも情報収集することができた。 以上をふまえて、象徴的な自然の越境を解明する有用なデータを効果的に得るために、ペルーの保護地域からメキシコ・イダルゴ州へ調査地を変更することにし、平成26年度交付額の一部を次年度に繰り越して十全な実地調査を実施できるようにした。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
平成27年度は本研究の最終年度であるため、当初の計画では実地調査は1回の予定であった。だが、平成26年度の研究活動の中でよりよい成果を上げるために調査地を変更して交付額の一部を平成27年度に繰り越し、実地調査を増やすことにした。 平成27年度は、繰り越した使用額と平成27年度交付額を有効に活用し、夏期と秋期を目途に2回メキシコ・イダルゴ州で実地調査を実施する計画である。夏期の調査では、同州レアル・デル・モンテの観光関係者や景観・遺産保全にかかる関係者から、重点的に情報を収集する予定である。秋期の調査は、イギリス・コーンウォール州レッドルスで実施されている祭事と同様の祭事がメキシコ・イダルゴ州レアル・デル・モンテで開催されるのに合わせて実施し、参与観察を中心に調査を実施して、質的情報を収集する予定である。
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Research Products
(4 results)