2014 Fiscal Year Research-status Report
高齢者介護と相続の相関にみる沖縄の「家族」に関する人類学的研究
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25770314
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
加賀谷 真梨 国立民族学博物館, 研究戦略センター, 機関研究員 (50432042)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 高齢者 / 地域介護 / 相続 / 社会組織 / 再帰性 / 伝統 / 沖縄 / 土地 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、沖縄県内で平成12年に同じプロジェクト傘下で開始された離島の高齢者地域介護事業の現在の状況について、波照間島と久高島で比較調査を行った。今年度初めて久高島に赴き、同活動の継続が困難であった背景を、島の歴史、生業、社会構造等との連関に留意しながら明らかにした。その結果、近代化(世俗化)のうねりに対して、久高島の人々が霊的世界をそのまま保持し、それに依拠することで対応(対抗)しようとした戦略が、間接的に地域介護をはじめとする祭祀以外の自律的な活動の継続を困難にしていることが明らかになった。 具体的な研究成果として、波照間島における地域介護をめぐるコンフリクトについて、5月16日にIUAESにおいて「Family and “family-like” people: conflicts over community-based elderly care」と題する研究発表を行った。また、地域介護の継続要因を再帰性という観点から読み解いた論文「ジェンダー視角の民俗誌―個と社会の関係を問い直す」を、森話社刊行の『<人>と向き合う民俗学(2014)』に寄稿した。久高島の調査結果に関しては、国立民族学博物館のウィークエンドサロンで発表した。さらに、ボランタリーアソシエーションの維持や存続の仕組みという観点から神奈川県で女性相談活動を行う非営利女性団体を読み解いた英語論文「An Alternative Place for Women: A Case Study of Women’s Support Activities in Japan」を国立民族学博物館発行の『Senri Ethnological Studies』に上梓した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
相続と介護の関係を波照間島と久高島で比較調査する予定であるが、相続は極めて私的な事柄であるゆえ、ラポールがきちんと形成されている状況で調査する必要がある。しかし新たな調査対象地として選定した久高島は、多くの調査者が訪れてきたことから島民の間に調査者に対する抵抗感が広く共有され、短期間の調査でラポールを形成するのは困難であることが本年度の調査で明らかになった。それゆえ、2島の比較研究という当初の計画を修正し、これまで5年以上調査を行い既に申請者とラポールが形成されている波照間島に限定して相続に関するより精緻なデータを収集することにする。 なお、波照間島の介護の実態に関しては詳細なデータが集積してきたのに対し、相続に関するデータはそれに劣っている。そのため、未だその両者の相関関係の分析に至っていない点が「やや遅れている」理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度であるが、産休・育休のため研究期間を1年延長する予定である。 産休明けには波照間島に限定して土地や屋敷の相続と介護の相関に関するデータを収集する。 とりわけ波照間島では平成26年12月から、農地の貸し手と借り手を結びつけて農地の集積化を図る県農業振興公社の農地中間管理事業が県内で初めて開始され、島外在住者が所有する波照間島の農地1.4㌶が地元の農家2人に貸し付けられた。こうした新たな土地の再分配制度に着目し、同事業を通じて農地を借り受けた若者に、なぜ農地を借りる必要があったのかその理由を相続との関連に留意して明らかにする。その他にも、Uターンしてきた島出身者の男性を中心にインタビューを行い、帰島理由から相続と介護に関する認識を明らかにする。 研究成果は来年度の日本民俗学会や比較家族史学会等で発表し、その発表原稿を論文に発展させて投稿する。
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Causes of Carryover |
今年度は本務校での業務が多忙であったことから、予定よりも調査の回数が少なく、また調査期間も短くなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度は本務校から離れるため、十分な調査時間を確保できる見込みであり、請求した助成金は主に調査のための旅費に使用する。
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Research Products
(7 results)