2013 Fiscal Year Research-status Report
移民政策と家族生活の保護―グローバル化時代の日独移民法制―
Project/Area Number |
25780001
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Komazawa University |
Principal Investigator |
大西 楠・テア 駒澤大学, 法学部, 講師 (70451763)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 移民法制 / 家族呼び寄せ / ドイツ / 家族の保護 |
Research Abstract |
平成25年度はドイツ移民法制における家族呼び寄せについて、理論状況を整理した。具体的には次の通りである:第一に、ドイツの移民法制は2004年の移住法の成立によって大きな転換点を迎えた。この大転換に伴い、学説のレベルでも従来の外国人法の枠組みを超えた移民行政法という新たな枠組みが提案されるようになった。第二に、2007年、ヨーロッパレベルの移民立法を国内法化するためドイツ滞在法が改正され、ドイツの移民法制は大幅にヨーロッパ化した。これによって、家族呼び寄せの法理も大きく変革した。すなわち、家族呼び寄せに関するEC指令(2003/86/EC)に基づく制度が設けられ、ドイツの移民政策とは異なる政策判断が取り込まれた。第三に、EC指令の成立とその国内法化に伴い、ドイツの移民法に対して、ヨーロッパ司法裁判所(ECJ)の解釈権限が行使される道が開かれることになった。すでに、ECJは、2006年の家族呼び寄せ指令判決(C-540/03)によって、EC指令を国内法化するにあたっての加盟国の義務を明らかにしている。第四に、ヨーロッパ人権条約などの国際人権法もまたドイツの移民法制を枠づけるが、家族呼び寄せ指令が国際法を大きく取り込んだことによって、ドイツの移民政策に対する国際人権法上の制約が実効力を増してきている。 以上、平成25年度の研究によって得られた成果は、論文(「グローバル化時代の移民法制と家族の保護―家族呼び寄せ指令とドイツの新移民法制」社会科学研究65巻2号)にとりまとめ、公表した。また、アウグスブルグ大学日本法シンポジウムにて、日本における外国人の人権と日本の入管政策について報告し、日独移民法制についてドイツの法律家と議論する機会を得た。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画上、初年度である平成25年度の達成目標は、ドイツ移民法制における家族呼び寄せの理論状況を明らかにし、整理することにあった。この目標はおおむね達成され、家族呼び寄せをめぐるドイツの議論状況を明らかにすることができた。さらに、その成果は論文に取りまとめて公表することができた。他方、ドイツ移民法制に対するヨーロッパ法の影響は当初予想されていたよりも大きいこと、さらに、ドイツ移民法制とヨーロッパ共通移民政策は相互的な影響関係にあることが新たに明らかになった。このため、ドイツ法とヨーロッパ法の相互影響については、さらに理論研究を続ける必要がある。
|
Strategy for Future Research Activity |
ドイツにおける家族呼び寄せについて、ヨーロッパ法の影響が予想以上に大きいことが分かったので、理論研究の点では、ドイツ移民法制とヨーロッパ共通移民政策の関係を明らかにする。平成26年度の計画としては、ドイツの移民行政の実務について、現地でのヒアリングを視野に入れた調査を行うことを予定しているので、その準備をすすめる。理論研究、調査の双方について、得られた成果は、順次論文として公表する。
|
Research Products
(2 results)