2013 Fiscal Year Research-status Report
アメリカ合衆国におけるコモン・ロー的な生ける憲法論の研究
Project/Area Number |
25780019
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大江 一平 東海大学, 総合教育センター, 准教授 (20509624)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生ける憲法 / 成文憲法 / 不文憲法 |
Research Abstract |
アメリカ憲法史においては、合衆国憲法5条による正式な憲法修正が行われていないにもかかわらず、数多くの変革がなされてきた。そのため、近時のアメリカにおいては、生ける憲法(living Constitution)をめぐる問題が活発に議論されている。そこで、こうした議論との関連で、合衆国憲法のポピュリスト的解釈で知られるイェール大学のA・アマーの不文憲法論(AKHIL REED AMAR, AMERICA'S UNWRITTEN CONSTITUTION: THE PRECEDENT AND PRINCIPLE WE LIVE (2012))に主として注目して研究を行った。 アマーは、不文憲法がアメリカの統治制度の根底をなすこと、不文憲法には、一人一票の原則のような不文のルールだけでなく、尊重に値する連邦最高裁の意見、画期的な議会制定法や大統領布告等が含まれること、そして、不文憲法と成文憲法が相互補完的な関係にあることを指摘する。 他方、コモン・ロー的な生ける憲法論を主張するシカゴ大学のD・ストラウスは、成文憲法の役割を重視しつつも、その限界を指摘し、一定の場合に裁判官が自らの観点に基づいて判断することを率直に認める 。それゆえ、ストラウスは、アマーの議論が成文憲法の役割を過大評価しており、個々の憲法条項の解釈も必ずしも説得的ではないと批判する(David A. Strauss, Not Unwritten, After All?, 126 HARV. L. REV. 1532 (2013))。 アマーの議論に対するストラウスの批判には相応の理由がある。しかし、アマーが成文憲法の行間を読む形で不文憲法の解釈を行い、また、最高法規としての憲法を遵守する裁判官の司法審査によって成文憲法と不文憲法が矛盾しないように統制を試みる点が注目に値することを明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の対象となるコモン・ロー的な生ける憲法は、裁判所と政治部門の相互作用によって形成される。そこで、(a)連邦最高裁だけでなく、連邦議会や大統領を含めた全憲法秩序を視野に入れて生ける憲法の形成過程を説明しようとするJ・バルキンの「生ける原意主義」(JACK M. BALKIN, LIVING ORIGINALISM (2011))や、(b)正式な憲法修正や連邦最高裁の憲法判例からなる大文字の憲法(Constitution)のみならず各種法令や行政実務からなる小文字の憲法(constitution)がアメリカ立憲主義において大きな役割を果たしていると主張するW・エスクリッジおよびJ・フェレジョンの議論(WILLIAM N. ESKRIDGE JR. AND JOHN FEREJOHN, A REPUBLIC OF STATUTES (2010))を検討することが不可欠である。しかし、現時点では、これら(a)(b)の議論の考察が必ずしも十分ではない。そこで、「(3)やや遅れている」と自己評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
J・バルキンの「生ける原意主義」(JACK M. BALKIN, LIVING ORIGINALISM (2011))、W・エスクリッジおよびJ・フェレジョンの議論(WILLIAM N. ESKRIDGE JR. AND JOHN FEREJOHN, A REPUBLIC OF STATUTES (2010))について重点的に考察を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
購入予定であった研究関連書籍が当該年度内に購入できなかったために、残額2,642円を次年度に繰り越した。 当該年度の繰越金は次年度の研究関連書籍の購入に充てる予定である。
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