2014 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ合衆国におけるコモン・ロー的な生ける憲法論の研究
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25780019
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
大江 一平 東海大学, 総合教育センター, 准教授 (20509624)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 生ける憲法 / 原意主義 / 部門主義 / 成文憲法 / 不文憲法 / コモン・ロー |
Outline of Annual Research Achievements |
アメリカ憲法史においては、合衆国憲法第5条による正式な憲法修正が行われていないにもかかわらず、数多くの変革がなされてきた。そこで、研究者は、アメリカ合衆国においては、先例や伝統からなり、成文憲法と同様の役割を果たすコモン・ローに基づいて生ける憲法が形成されてきたとするコモン・ロー的な生ける憲法論の意義を考察した。 コモン・ロー的な生ける憲法は、裁判所と政治部門の相互作用によって形成される。そこで、①連邦最高裁の役割だけでなく、連邦議会や大統領を含めた全憲法秩序を視野に入れた上で生ける憲法を説明しようとするS・グリフィンの発展的憲法理論(STEPHEN M. GRIFFIN, LONG WARS AND THE CONSTITUTION (2013))や②成文憲法を補完する各種法令がアメリカ立憲主義において大きな役割を果たしていることを主張するW・エスクリッジおよびJ・フェレジョンの議論(WILLIAM N. ESKRIDGE JR. AND JOHN FEREJOHN, A REPUBLIC OF STATUTES (2010))を中心に検討した。また、③成文憲法と不文憲法(生ける憲法)の相互補完性を指摘するA・アマーの不文憲法論(AKHIL REED AMAR, AMERICA'S UNWRITTEN CONSTITUTION (2012))や④人民主権を強調する二元的民主政理論の観点から1950~60年代の市民権運動を再解釈するB・アッカーマンの議論(BRUCE ACKERMAN, WE THE PEOPLE 3 (2014))も併せて検討した。 これらの議論の考察を通じて、(a)コモン・ロー的な生ける憲法の形成に際しては、連邦最高裁に加えて、大統領や連邦議会の憲法解釈に注目する必要があること、(b)成文憲法と生ける憲法は相互補完的なものであること、そして、(c)成文憲法と生ける憲法が矛盾しないように裁判官の司法審査によって統制が図られるべきことを明らかにした。
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Research Products
(1 results)