2014 Fiscal Year Annual Research Report
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25780020
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
宮崎 綾望 京都産業大学, 法学部, 准教授 (50633195)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 税務コーポレートガバナンス / 租税行政 / 課税庁と納税者の信頼関係の構築 / 協力的コンプライアンス / リスク管理手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①リスク管理手法による税務行政について諸外国で用いられている具体的な事例を収集・分析し、②リスク管理手法による税務行政の理論的基礎を明らかにし、③わが国への導入の意義と課題を明らかにしようとするものであった。平成26年度にとりまとめた研究の成果は下記のとおりである。 第1に、オーストラリアにおけるBraithwaiteの応答的規制理論と、それを基礎として展開された新たな税務行政手法を明らかにした。 第2に、わが国における「税務に関するコーポレートガバナンスの充実に向けた取組」(税務CG)について、その背景を分析したうえで、今後のあり方について検討を加えた。この取組みは、リスク管理手法の一部として位置付けることができる。今後は、その法的位置づけなどについて議論する必要がある。 第3に、2013年にOECDにより公表された報告書「Co-operative Compliance: A Framework. From Enhanced Relationship to Co-operative Compliance」について分析を行った。その結果、リスク管理手法の一部として「協力的コンプライアンス」と呼ばれる手法が広がっていることが明らかになった。協力的コンプライアンスは、納税者の任意性を前提として税務コーポレートガバナンスの整備やリスクの高い税務問題を開示してもらうことによって、税務当局が税務行政の効率化を図ることができると同時に、納税者にとっては交換に早期に予測可能性を得ることができるというメリットがある。この手法は、法令による義務と権利の関係の限界を超えて、公権力の行使や争訟手続の枠外において双方がメリットを得ようとするものである。このような手法には、法の下の平等や法による行政の原理に反するのではないかという懸念がある。このような懸念については、税務行政庁の判断に一貫性を確保するインフラの整備が必要となることを明らかにした。
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