2014 Fiscal Year Research-status Report
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25780029
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
岩本 禎之(李禎之) 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (20405567)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 暫定措置 / 差止命令 / injunction / 救済 / 司法的コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、①暫定措置付与の要件、②暫定措置の内容、③措置違反の法的帰結の三局面に考察の視点を定めて、国際裁判所の実行を判例分析という手法によって横断的に比較検討していくものであり、本年度は、暫定措置の内容に関して、差止命令の類型を整理し、その位置づけについて検討を行った。 まず、「差止命令(injunction)」とみなしうる暫定措置の類型を整理するため、英米法系国内法を参照しつつ概念規定を行った上で、国家責任条文上の救済方法に関する区別を枠組として判例分析を行った。 その結果、判例分析を基づく類型(国際司法裁判所における軍隊等の撤退、人権裁判所における死刑等の執行停止、投資仲裁における国内手続・国内措置の停止)のいずれもが「違法行為の中止」を求める内容と整理でき、それらは理論上、損害の回避に加えて、合法性の確保を促進するという側面を有していると評価できた。確かに、投資に関する類型では損害回避の側面が強く、人権に関する類型では権利保全の側面(侵害される権利の重大性)との関連性が強いという特徴がみられるとはいえ、差止の対象となる行為の違法性、すなわち、当該行為が条約目的、ひいては共通利益を基盤とした公法的秩序に反することが差止命令の実質的な理由とされていることを確認できた。本年度の研究から、主題によって共通利益の強度が異なるため濃淡はあるものの、暫定措置が一定程度の司法的コントロールをもたらしうるものであることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、差止命令の概念整理を行い、関連する判例の整理・分析を進めることができた。差止命令の分析から得た知見は、世界法学会にて発表する予定である。(平成27年5月予定。)
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度は、暫定措置命令の効力に関して分析する予定である。 まずは各裁判所で諸判例における理由付けを精査し、「法的拘束力」の根拠および射程を明らかにする。それを踏まえて、暫定措置命令の不遵守に対する法的帰結を判例から検討する。その際、国家責任法上の法的帰結(賠償等)を考察の枠組として利用するが、国家責任以外の帰結の存否(訴訟手続内での制裁)可能性も検討する。 以上の分析により、各種の国際裁判所の共有認識となっている暫定措置の法的拘束力が、具体的な法的帰結においてどの程度異なっているのかを明らかにし、救済方法の観点から暫定措置を多辺的義務の強制手段と位置づけることの意味を考察する予定である。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた書籍(とりわけ、判例集)の出版が遅れたため年度内の入手ができなかったこと、並びに、予定していた研究成果報告の日程が年度末および次年度になったことによる。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
入手予定の図書類を購入し、世界法学会にて研究成果報告を実施する予定である。
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Research Products
(2 results)