2014 Fiscal Year Research-status Report
企業組織再編時の労働者保護を目的とした法規範の構築方法
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25780035
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
成田 史子 弘前大学, 人文学部, 講師 (90634717)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 企業組織再編 / 事業譲渡 / 会社分割 / ドイツ法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題のうち、平成26年度は、比較法的見地の獲得を目指して、EU及びドイツの企業組織再編における労働者保護法制の構造の分析に力点をおいた。ドイツ法の分析は、日本法の分析と同様に、承継強制・承継排除の不利益を検討の軸とし、①事業譲渡及び②会社分割時の労働契約承継の実体規制及び手続規制について検討を行った。 ドイツでは、①事業譲渡における権利義務の承継は、日本と同様、個々の債権者の同意を必要とする特定(個別)承継の考え方で処理されるのが原則である。しかし、労働契約に関しては、民法典613a条により、労働契約を自動的に新たな事業所有者へ承継させ、かつ事業譲渡を理由とする解雇及び労働条件の不利益変更を禁止する特別規制が設けられている。加えて、新たな事業所有者の下へ労働契約が自動承継されるのを拒否し、従前の使用者の下での雇用継続を希望する労働者に対しては、異議申立権が付与されている。一方、②権利義務の承継が(部分的)包括承継の方法で処理される分割は、1994年制定の組織再編法(Umwandlungsgezetz)により規制されており、労働契約は事業譲渡の特別規制である民法典613a条のルールに従い、承継がなされる(組織再編法324条)。これにより、新たな法主体(使用者)へ移転する事業または事業の一部に所属する労働者は、自動的に新たな法主体へ承継され、解雇・労働条件の不利益変更が禁じられる。加えて、承継対象となる労働者を、使用者と従業員代表機関である事業所委員会(Betriebsrat)との利益調整(Interessenausgleich、事業所組織法112条)とよばれる交渉によって、決定できる手続方法が設けられている(組織再編法323条2項)。 以上のような企業組織再編に係る労働者保護法制に関して、EUの立法状況も視野に入れながら、ワイマール期までさかのぼり、分析を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書では、今年度、ドイツでの実態調査を予定していたが、諸般の事情により、実態調査を行うことができなかった。これにより、文献中心の研究となってしまった。 しかしながら、立法資料や学説の議論及び判例等の分析はおおむね順調に進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究最終年度では、日本法への解釈論・立法論的提案へ向けて取りまとめの作業を行う。また、今年度行うことができなかったドイツでの実態調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
平成26年7月から10月までの3か月間、東京大学大学院法学政治学研究科へ国内留学を行った。この期間、本務校での事務処理の都合上、科研費の使用ができなかった。また、予定していたドイツへの実態調査も、国内留学との関係で行うことができなかった。そのため、次年度使用額が生じた。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
今年度は、昨年度行えなかったドイツへの実態調査を行う予定である。そのために、旅費を使用する予定である。
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