2013 Fiscal Year Research-status Report
マルチジョブ就労者の労働時間規制のあり方に関する比較法研究
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25780036
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
本庄 淳志 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (90580978)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | マルチジョブ / 労働時間 / 兼職 / インターバル規制 / オランダ労働法 / 労働者派遣 / 労働市場 / 有期雇用 |
Research Abstract |
2013年度は,研究対象国であるドイツおよびオランダの労働時間に関する法規制および裁判実務に関する情報を,広く収集・分析した。具体的には,まずはEU指令における労働時間規制の枠組みについて分析するとともに,ドイツとオランダの労働時間規制,および例外的に法定労働時間を超えることが許容される労働者の範囲や要件等について,文献調査によって概観した。 EU加盟国での労働時間規制に着目すると,EU指令のもとで,いわゆるインターバル規制が導入されつつあり,具体的には,各労働日の間で最低11時間の休息時間を確保することが使用者に義務づけられている。もっとも,こうした規制は,基本的に同一使用者のもとでのシングル・ジョブでの就労を念頭に展開されてきたものである。本研究が対象とするマルチ・ジョブ・ホルダーの労働時間規制のあり方については,上の基本枠組みを前提としながらも,それぞれの使用者に対する制裁のあり方や,その前提として,各使用者がいかにして多重就労者の労働時間を管理しうる/すべきかという問題について,ドイツおよびオランダ法における規制の枠組みや問題点,裁判例の動向について包括的に整理する必要があり,現在こうした作業を行っている。その成果の一部は,2014年の夏頃に,神戸労働法研究会において報告する予定である。 また,こうした労働時間規制の分析と平行して,労働市場の流動化のなかで,マルチ・ジョブ・ホルダーの多くが現実には有期雇用や労働者派遣によって兼職しており,労働時間規制のあり方を考える上でも無視し得ないこと,そして近年では有期労働法制がめまぐるしく変化していることをふまえて,2013度には,ドイツおよびオランダの有期労働法制の最新動向についてもフォローすることに努めた。その成果の一部は,大内伸哉(編)『有期労働契約の法理と政策』(弘文堂,2014年)として公刊している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概要に示した通り,本研究は概ね順調に進展している。 研究初年度であった2013年度には,まずは前提となる情報を広く収集することを目的として,文献調査を中心に研究を進めてきた。ドイツ法およびオランダ法ともに,労働時間規制およびマルチ・ジョブ・ホルダーに対する法規制の全体像(本研究が対象とする労働時間規制のほか,兼職規制のあり方や労働者に課される契約上の諸義務)が明らかになりつつあり,研究は当初の予定通りであると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
現在,内閣府の研究会を中心として,日本では労働時間規制の骨格部分をめぐる議論が進みつつある。伝統的に割増賃金規制を中核としてきた日本の労働時間法制は,それ自体で最近の諸外国の規制手法と異質な面があり,本研究の遂行に際しても,日本での新たな議論の動きには継続的なフォローが必要と考えられる。 こうした動きもふまえつつ,研究最終年度である2014年度には,これまで収集した情報を包括的に再整理するとともに,特に労働時間規制を中核として,日本におけるマルチジョブに対する法規制の方向性を提起する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じたのは,主として海外出張を2014年度に延期したことによる。概要に示した通り,2013年度には文献調査を中核とし,まずはオランダおよびドイツの法制度を概観した。また,2013年度には,全労済協会により,「雇用形態の多様化時代における企業外部労働力の包摂に関する法的研究」をテーマとして支援を受け,当初予定していた日本語文献の購入,および国内旅費の一部について,上の研究遂行にあわせて実施することができた。 2014年度には,昨年度に予定していた海外出張を計画しているほか,当初計画よりも国内での出張が大幅に増える見込みである。また,「次年度使用」に該当する物品購入費について,新たに必要となった書籍をはじめとする物品購入に使用する予定である。
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Research Products
(3 results)