2013 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
25780047
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 優輝 広島大学, 社会(科)学研究科, 准教授 (00634023)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | スポーツ / 被害者の同意 / 危険の引受け |
Research Abstract |
本研究は,スポーツ上の行為によって人の生命や身体を侵害した場合に,その行為が刑法上正当化される(罪責を問われない)根拠,要件,範囲を解明することを目的とするものである。 研究初年度である本年度は,研究実施計画に従って,日本のこれまでの議論を整理・検討した上で,ドイツの議論状況の調査を行った。日本では,刑法35条の正当業務行為として正当化されると簡単に述べられるにとどまることが多く,正当化の要件や範囲について十分な議論が行われているとは言いがたいのに対して,ドイツでは,詳細な議論が行われていることが確認された。中でも,(1)被害者の同意,危険の引受け,社会的相当行為その他種々の観点から,正当化の実質的根拠について検討している点,および,(2)スポーツ上の行為といっても,スポーツの種目,行為の態様,ルール違反の有無などによって多様なものがあることを念頭に置きつつ,適宜場合を分けて整理している点で,日本より充実した議論が展開されており,日本での議論にも資するところが大きいと思われる。 本研究の関心は,とりわけ被害者の同意や危険の引受けといった被害者の意思が有する意義・役割にあるので,本年度はそれに関わる文献を中心に調査した。現時点では,被害者の意思がスポーツ上の行為の正当化において重要な意義を有するとの見通しを得ているが,今後さらに研究を進めていきたい。さらに,被害者の意思に関わらない正当化根拠についても検討することにより,被害者の意思が果たす役割の限界をも考察しつつ,研究成果として公表する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度初めて講義を担当するようになり,その準備に当初の予想以上に時間を要したため,「研究の目的」のIIに記載した,行為の有用性を根拠とする正当化の可能性についての検討まで進まなかった。Iの被害者の意思を根拠とする正当化の可能性については,ある程度研究が進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き,ドイツの文献を収集・調査してドイツの議論を検討しつつ,それを日本での議論につなげる可能性を探り,夏頃を目処に研究成果としての論文作成にとりかかりたい。なお,「現在までの達成度」に記載の通り,研究進度が当初の予定より遅れているが,今年度は,前年度の講義準備の蓄積があり,準備に多大な時間をとられることはないので,本研究に充てる時間を多くとれる見込みである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究の進捗状況がやや遅れているため,文献の収集のために予定していた物品費に未使用が生じ,また,研究の途中経過を報告するために予定していた研究会等出席の旅費にも未使用が生じた。 物品費は,スポーツに関する文献のほか,初年度には実行できなかった,関連領域としての治療行為に関する文献の収集に充てる。旅費については,各種研究会への出席に当てられるほか,ある程度まとまった研究成果が出た段階で研究報告の機会を設けて,それへの出張費に充てる。
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