2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25780047
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
田中 優輝 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (00634023)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | スポーツ / 刑法 / 被害者の同意 / 危険の引受け / ルール |
Outline of Annual Research Achievements |
スポーツ上の行為によって生命・身体の侵害結果が生じることはしばしば見られ、これが一定の範囲で刑法上正当化されることに異論はないものの、正当化の根拠や範囲についてこれまで十分に詰めた議論が行われきたわけではない。本研究の目的は、とりわけ被害者の意思に焦点を当て、スポーツ上の行為の正当化においてそれがどのような意義を有するかを探究することである。 研究最終年度である本年度は、前年度に引き続きドイツの文献に当たり、スポーツ上の行為の正当化根拠に関する諸見解を検討した。被害者の同意も正当化根拠の1つとして挙げられるが、そこでいう同意は、基本的には、現実に当該被害者が与えている意思内容を問うものではなく、その種のスポーツに参加する者が通常有しているであろう意思内容を推断的に見るものである。正当化根拠を被害者の同意とするにせよ、社会的相当性あるいは許された危険と表現するにせよ、問題の行為が当該スポーツにおいてあらかじめどの程度想定されているかが重要となる。 その際、競技ルールに着目して場合分けされ、大雑把にいえば、ルールを遵守した行為および軽過失によるルール違反行為は適法、他方、故意または重過失による甚だしいルール違反行為は違法とする点では、概ね一致が見られる。もっとも、ルールといっても、競技参加者の生命・身体の安全を守るためのものとそうでないものとでは、扱いが異なる。また、相手方の身体に故意に暴行・傷害を与えることが想定されるスポーツとそうでないスポーツとで、刑責を否定する理論構成が変わってくる。 以上の点を整理した上で、研究成果として、広島法学誌に論文を公表する予定である。
|