2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
25780050
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
笹倉 宏紀 慶應義塾大学, 法務研究科, 教授 (00313057)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 行政調査 / 証拠能力 / 自己負罪拒否特権 / 令状主義 / プライヴァシー / データ保護 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は,研究代表者が年来取り組んできた,行政調査と刑事手続の関係――両手続間の情報・証拠の融通の可否と限界,およびその両手続の法的規律の相違が及ぼす影響――についての研究に一応の区切りをつけるべく,その成果を取りまとめるための最終的な作業を行うことを目的とするものである。 研究最終年度に当たる平成27年度においては,次のとおり研究を実施した。 まず,過去2か年度と同様に文献資料の拡充に努めたほか,懸案であった海外における現地調査も行い,これまで手薄であったイギリス法ないしヨーロッパ法について最新の情報を入手することができた。 次に,これらの作業を通じて得られた素材を基にして,刑事訴訟法の解釈論として――上記研究課題の骨格を成すところの――「情報」の取扱い,とりわけ,適法に獲得された情報の蓄積と目的外利用を限界づける法理を,これまでの刑訴法,とりわけ捜査法の体系との関係に留意しつつ,明らかにすることに努めた。 その結果,情報の扱いを制御するために案出された情報プライヴァシーないしデータ保護という発想に関して憲法学・行政法学説上現在一般的な思考と,刑訴法学における思考との間には相当の懸隔があること,および,両者の間を架橋し,情報の取扱いについて適切な解決を得るためには,刑訴法における捜査の基本的規律のあり方に関する思考を部分的に修正しなければならないことが明らかになった。そして,その修正の基本的な方向性については,従来の刑訴法理論と断絶を来すことなく,それを発展的に変容させることで対処可能であり,かつそうすべきであるという認識に達し,具体的な修正の仕方についても一定の結論を得ることができた。これらの成果は,「研究発表」欄に掲記するとおり,我が国を代表する法律雑誌の小特集,および日本刑法学会第93回大会の分科会において発表した。
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