2013 Fiscal Year Research-status Report
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25780052
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
深町 晋也 立教大学, 法務研究科, 教授 (00335572)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 緊急避難論 / 正当化的緊急避難 / 免責的緊急避難 / 家庭内暴力と刑法 / 違法と責任 |
Research Abstract |
1.平成25年度は、研究計画に従い、ドイツ・ケルン大学の外国・国際刑法研究所(所長・Thomas Weigend教授)に出張し、ライヒ刑法典が制定された後の刑法改正作業の過程を調査し、刑法改正草案における緊急避難規定の展開や、これに影響を与えた実務上あるいは学説上の議論についての検討を行った。特に、ライヒ裁判所が正面から正当化的緊急避難を認めた1928年判決(RGSt61,242)以降、ドイツにおいていわゆる二元的見解が定着するに至った議論動向を調査しつつ、正当化的緊急避難の諸要件や免責的緊急避難の諸要件がどのように委員会などでの議論を経て規定されるに至ったのかを、各草案、特に1962年草案や1966年の「対案」などの議論を正確に理解することに努めた。 2.他方、平成25年度は、平成26年度の研究内容のうち、スイス刑法の緊急避難規定につき、一部を前倒しして調査・研究を行った。スイスにおいては、特に1990年代に入り、家庭内暴力の被害者がその加害者を殺害する事案を巡って、ドイツ刑法の議論を援用しつつ、緊急避難論の枠組みに依拠した判断が、相次いで連邦裁判所によって示されているため、こうした新たな動向に関しての研究を進めた。こうした研究の結果、ドイツ刑法とスイス刑法との異同がより明確になり、我が国の緊急避難論に対して示唆を与える議論を的確に抽出することが可能となった。 3.これらの研究結果を受けて、研究代表者は、平成25年度において、既に家庭内暴力の被害者を巡る緊急避難の諸問題について論文を完成させており、当該論文は、平成26年度中には公刊される予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.平成25年度は、一方で、当初の研究経過のうちの一つの柱であった、1871年ライヒ刑法典制定に至る立法史的・学説史的展開に関する調査については十分に目標を達成できなかった。北ドイツ連邦刑法草案についての調査は進展したものの、各ラント法の立法状況についてはなお調査が不足している。 2.他方、平成25年度は、スイス刑法における緊急避難論の一部について、前倒しして研究を進めることで、研究計画において予定していた、ドイツ法とスイス法との比較の視座の定立・獲得という点については相当程度に進捗した。こうした視座を元に、逆にドイツ法固有の問題についても検討が深まったという意味で、現在までの達成度としてはおおむね順調と言えよう。
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Strategy for Future Research Activity |
1.平成26年度は、大きく分けて2つの方向で調査・研究を進めていく予定である。第1に、平成25年度に予定していた、19世紀までのドイツにおける立法史的・学説史的展開についての調査である。第2に、スイス刑法についての調査・研究を継続しつつ、オーストリア刑法についても新たに調査・研究を行うことである。 2.こうした調査・研究を行うためには、スイス及びオーストリアへの出張及び現地の専門家との意見交換が不可避である。こうした観点から、平成26年度は、スイス・チューリヒ大学及びオーストリア・ウィーン大学に、それぞれ出張を行い、資料収集や意見交換を行う予定である。 3.また、平成25年度に完成させた論文における成果を元に、家庭内暴力の被害者が加害者を殺害したような事案に関する我が国の判例・裁判例についての分析を進めることを、新たに予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の助成金のうち、人件費として計上していた部分については、自らデータを電子化したなどして省力化して使用しなかったため。 平成26年度においては、北海道大学における研究会に継続して参加し、報告するために、年3回から4回の国内旅費を支出する。また、10日間程度のスイスへの出張、及び1週間程度のオーストリアへの出張を各々1回行うために外国旅費を支出する。 更に、19世紀のドイツ刑法に関する基礎的文献や、スイス刑法及びオーストリア刑法に関する基礎的な文献を購入するために設備備品費を支出する。なお、特に外国出張において収集した立法資料等を整理・データ化するためのアルバイトに人件費を支出する予定である。
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Research Products
(1 results)