2013 Fiscal Year Research-status Report
法人・資産・組織再編の私法的位置づけをめぐる比較法的研究
Project/Area Number |
25780055
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
川村 力 北海道大学, 大学院法学研究科, 准教授 (70401015)
|
Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 合併 / 組合 / 法人 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画の初年度にあたること、研究遂行者が年度当初から既に在仏研究にあることから、本研究の中核にあたる歴史研究の基礎を構築することをとりわけ念頭に置きつつ、当該環境を活かして、フランスを中心とする大陸の学術的知見及びその蓄積を吸収する作業に従事した。同作業は主に以下の3つに分類できる。 第一に、本研究の設定する課題に直接関連する法人・組合・資産に関する法学分野での学術的文献を渉猟し、古法期から現代までをカヴァーすべく各時代の文献を通時的に検討することで知見を蓄積すると共に、課題を見直しかつ位置づけ直す作業を行った。第二に、各時代の社会的・思想的背景の中に課題を位置づけ研究をヨリ本格的な水準にもたらすべく、歴史学及び思想史の研究を行った。すなわち、研究遂行者が所属するEcole Normale Superieure(以下ENSとする)において、一方でギリシャ・ローマをはじめとする古典およびその解釈手法につき、他方で近代思想史の構造とその現代における位置づけについて、文献の検討はもちろんのこと、夫々に当該分野の専門家と継続的に議論を交わした。そして第三に、以上の作業により得られた視点及びそこから浮かび上がった具体的な課題に対応し、実地における資料・文献の収集を行った。すなわち、国立中央文書館・県文書館における裁判・登記資料、加えて法学・歴史学の学術文献については、パリのフランス国立図書館及びENS図書館に加えてローマ法学の1つの中心であるイタリアのナポリにおいて資料の収集及び検討を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は会社と組織再編法制との関係を、それを構成する組合・法人・資産の概念及び実務双方の積み上がりから検討するものであるが、それをヨリ本格的に行うためには、法学のみならずその背景で各時代を構成してきた社会について、やはり思想・社会学平面の双方について検討する歴史学的作業が不可欠となる。法学平面でどのように結晶するかが本研究の直接的な目的であるが、本研究全体を見据えた基礎作業にあたるステップとして、在仏研究という環境の利点を活かして、法学の作業と並行して歴史学的作業において一定の思考と見通しとを得ることができたことから、おおむね順調であると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度までの研究で、法学・歴史学双方における知見及び資料の収集という基礎作業には一定の見通しが立ちつつあるが、他方で平成26年度途中に日本に帰国することを予定していることから、今後の作業は大きくフランスでの作業と日本での作業の2つに分けられることとなる。 第一に、残る在仏研究期間においては現地の利点を活かすため上記作業を継続するが、加えて今後はフランス法の知見の全体をまとめる作業に徐々に比重を移し、とりわけ理論的な知見に実務家へのインタヴュー等の実証を加える作業を現地にいる間に行いたい。 第二に、日本への帰国後は、持ち帰った資料を基に27年度に予定する成果の公表作業に向けて、理論的側面の研究と実践的分野での研究とを併せた、フランス法の知見の全体をまとめる作業に原則として専念し、その際に作業途中で必要となる資料を集中的に収集するために渡仏する機会を確保することになる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、第一に、フランス古法に時系列的に先行し直接・間接に影響を与えた中世イタリア法学、及びローマ法学はじめ古典解釈自体の偏差を測定すべく、イタリアにおいて、第二に、資産及び法人論、その19世紀以降現代までの議論並びに射程の偏差を検討すべく、ドイツにおいて、調査・資料収集を予定していた。 しかし、このうちドイツについては、対象が時系列的に後行し、また法人論はむしろ公法分野での射程が大きかったことから、私法分野の積み重なり・さらには公法分野への一定の見通しを得てから調査を行う方がヨリ効果的であると判断した。他方イタリアについては、分野も時間軸上も広範囲に及ぶため、二度に分けて調査を行うこととし、本年度は基礎となるローマ法学に関連する資料を中心的に収集することにした。そこで、ドイツ・イタリアそれぞれについて、現地調査旅費および文献購入費を次年度に残すこととした。 次年度には、日本に帰国するまでの在仏研究期間を活用して、まずはイタリアにおける調査・資料収集を、本研究の課題をヨリ直接構成する組合に関する文献を中心として、再度行うことを予定している。他方、さらにフランス法の検討を進めた上で、ドイツにて資産及び法人に関する議論、さらにはその受容・射程について、現地の研究者との議論及び関係資料の収集を行うことを予定している。
|
Research Products
(2 results)