2013 Fiscal Year Research-status Report
民事法学における実証分析の活用:政策評価と損害賠償額算定
Project/Area Number |
25780057
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Research Category |
Grant-in-Aid for Young Scientists (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
森田 果 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (40292817)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 民事法学 / 法と経済 / 実証分析 |
Research Abstract |
本研究は,データに基づいた実証分析の民事法学における活用を2つの方向から探究するものである。第一に,法ルールは,何らかの社会目的を実現するための政策としての性格を持つ。そこで,データに基づいて当該目的の達成の有無を評価すれば,解釈論・立法論に対する客観的な基盤を提供できる。かかる政策評価は,米国では普及しているが日本ではほぼ皆無であり,必要性・重要性が高い。第二に,裁判実務における実証分析の活用を探究する。具体的には,損害賠償額算定のための新たな視点の提供を試みる。損害賠償額算定は,従来,法学研究でも法と経済学でも分析は不十分であった。本研究は,計量経済学を活用した独創的な算定手法の基礎の確立を試みる。 本年度は,データベースの構築の他,実証分析のための方法論を深める成果を公表することができた。研究成果のうち,法学セミナー誌に連載した論文「法律家のための実証分析入門」(第20回~第27回),および,図書『数字でわかる会社法』のうちの1章「実証分析入門」は,そのような成果である。法律家の多くは統計的な手法についてあまり詳しくはないが,さまざまな統計的手法の意義は何か,それぞれにどのような限界と魅力があるのか,という点を明らかにした。 さらに,中途まで構築したデータベースを元にした分析結果が,国際学会Fifth Annual Conference of the Society for Environmental Economicsにおいてアクセプトされ,これを報告することができた。同学会では,環境法の法と経済学に関する世界のトップ研究者から有益なフィードバックを得ることができた。 このほか,法と経済学に関する補足的な研究成果として,私的秩序の生成と機能に関する研究も公表することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は,データに基づいた統計的(定量的)な実証分析であるため,①データベースの構築,および,②当該データベースに基づいた統計的・理論的分析の二段階を経る。平成25年度は,①データベースの構築を主に行うが,進捗状況に応じて,②データベースに基づいた統計的・理論的分析も行うのが当初の予定であった。 しかし,部分的に構築されたデータベースを元に分析を行った結果について,学会報告(Fifth Annual Meeting of the Society for Environmental Law and Economicsにおける"A Hedonic Approach to Radiation Contamination Damages")を行うことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度以降も,引き続き①データベースの構築,および,②その統計的・理論的分析を行うが,重心は②に移っていく。 データベースの構築については,データの入手に制約が見られる場合には,それをあきらめ,より理論的な方向へと研究の重心を移していくことも検討する。 研究成果の公表による社会へのフィードバックについては,本研究は,国内のみならず国際的にも独創的で有益な研究活動であるので,国内の雑誌等での成果公表のみならず,国際的なジャーナルに研究成果論文を投稿し,国際的に研究成果を公表していくことにつとめる。国際ジャーナルでの成果公表が,理論的な側面を中心とするのに対し,国内での研究成果公表は,より実践的な政策インプリケーションにより重点を置いた形にすることで,社会的な貢献度を高める予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
6278円という比較的少額の端数だったので,それに適した支出先が存在しなかったため,本年度中に無理に使用するよりは,次年度の請求額と併せて使用する方が,研究計画の目的に沿ったより効率的な利用が可能と判断したため。 次年度使用額は,6278円という端数の比較的少額なので,次年度請求額と併せて当初の計画通り使用する計画である。
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[Book] 数字でわかる会社法2013
Author(s)
田中亘,飯田秀総,久保田安彦,小出篤,後藤元,白井正和,松中学,森田 果
Total Pages
298(252-280)
Publisher
有斐閣
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