2015 Fiscal Year Annual Research Report
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25780060
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
加藤 貴仁 東京大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (30334296)
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Project Period (FY) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 会社法 / 金融商品取引法 |
Outline of Annual Research Achievements |
株主訴訟による違法行為抑止メカニズムについて、法的解釈などの明確化が求められている問題の調査・検討を行った。具体的には、①親会社または支配株主が存在する会社の取締役の義務・責任、②完全親会社の株主による完全子会社の取締役の責任を追及する訴訟(多重代表訴訟)の手続き、③有価証券報告書等に虚偽記載を行った上場会社の責任、である。①については、親会社または支配株主が選解任権を有している状況では、取締役の義務・責任を通じて利害関係人を保護することは困難であることを明らかにした上で、取締役の親会社または支配株主に対する地位を高めるために立法論または解釈論による対応が必要であることを明らかにした。②については、完全子会社取締役が負う義務・責任は多様であるため、その全てを多重代表訴訟の対象とすることは、それらの責任のエンフォースメントの手段として適切性を欠く可能性があることを明らかにした。また、現行法上、多重代表訴訟を提起できる完全親会社株主が自分がその地位にあることを完全子会社に主張できる法的仕組みが存在しないことを明らかにした。この点は、多重代表訴訟に限定される問題ではなく、社債株式等振替法が適用される上場会社の株式については社債株式等振替法上の制度に基づき会社は株主構成を確認することができることおよび株主は自分が株主であることを会社や第三者に主張することができるため、対抗要件や株主名簿の法的位置づけを再検討する必要があることを示すという意味で、広がりを持つことが明らかになった。③については、近年、株主訴訟の適正化に関連する重要な判決が合衆国最高裁判所によって相次ぎ出されたので、これらを研究し、日本法の解釈論への応用可能性について分析をした。
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